作家の故・司馬遼太郎さんは、『アメリカ素描』(新潮社文庫:740円)のなかで、日本の“梅”の苗をアメリカに持っていき植えたら、“プラム”になったという話を紹介している。
「朱に交われば紅くなる」との諺は、植物の世界でも生きているのを知って、妙に感心させられたのを覚えている。
さて、企業の場合はどうだろうか?
小売業界でも最近はヘッドハンティングが横行している。他社で咲かせた大輪を、我が社でもぜひ、とばかりに、摘んでは自分の庭に植えるという行為が後を絶たない。
その結果、双方がハッピーになればまったく問題はないが、大半は失敗に終わっており、梅たちは転職を繰り返すことになる。
人間は新しい環境にはなかなかなじめないもの。「社歴も実力のうち」なのだから、抜かれる側は万全の注意を。抜く側は、責任を持って、梅をプラムにする努力が欲しい。