売上高4000億円の企業が中期5カ年計画の売上高目標を1兆円に据えたとする。
この瞬間に、その企業は、過去の仕事を根本的に見直さなければいけない。
消費に力がなく、低成長を強いられる商況の中で売上を次年度から、毎年20%ずつ伸ばさなければ届かない大変な目標だからだ。
食品スーパーなら、既存店舗をなんとか対前期比ゼロ成長で維持しながら、売上高20億円を上げられる店舗を300店舗出店しなければならない。
M&A(合併・買収)を実施するにしても、1000億円以上の売上規模を持つ食品スーパーの企業はそれほど多くはないので、どうしても自力成長に軸足を置かざるをえないだろう。
ということは、「1兆円」、と目標を設定した時点で、対前期比主義を頭から否定し、決別し、白紙から成長戦略を立てなければ到底間に合わない。
このように中期5カ年計画の場合は、対前期比主義を否定しなければいけないことが誰にでもわかる。
ところが次年度の1カ年計画を策定する場合、多くの企業経営者は、今年の業績に数%オンすることで「えいや!一発!」という感じで、次期の計画目標を決めているのではないだろうか?
しかしながら、単年度の計画も、積み上げ方式にしかならない対前期比で組み立てるべきではなく、目標値から遡って、組み立てるのが正解だろう。
「夢に日付を」とワタミ(東京都)の渡邉美樹会長は提唱し、夢と現実の差を明確にしてその差を日数で割り、日々やるべき事をやり抜くことを勧めている。
企業の事業計画もまさに同じで、目標と積み上げた実績の格差が判然とすれば、組織や仕事の仕方を変え、イノベーションを起こす必要が見えてくる。