監督としての通算成績1565勝1563敗――。
ID(Import data)野球を掲げ、南海ホークス、ヤクルトスワローズ、阪神タイガース、楽天ゴールデンイーグルスという4つのプロ弱小チームを次々と再生させた(再生の礎をつくった)野村克也さんがユニフォームを脱いでからさみしい思いをしている。
野村さんの功績は、スーパースターなどの個人の才能に依存していた野球にチームスポーツとしての新しい視点を見出したことにあると私は考えている。
長嶋茂雄、王貞治、福本豊、イチロー、などの“超天才”を策略・謀略を張り巡らせることで奈落の底に突き落とす。「敵を倒すにはまずリーダーを狙え」の鉄則通り、敵の監督の采配などにも厳しい言葉を投げて、混乱させた。
“超天才”も人間だから必ず油断する時がある。それはいつなのかを、データで固めた。油断しなければ、口撃することで隙をつくった。そこには、常に逆転のドラマがあった。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」の言葉を好み、なぜ勝ったかを分析するよりもなぜ負けたかにこだわった。他球団に相手にされなくなったロートル選手は、その欠陥を本人に気付かせることで再生させた。
「念ずれば花開く」を座右の銘にする月見草は劣等感をバネに選手としてはもちろん、監督としても大輪の花を咲かせた。
この1月24日、政権政党から下野した自由民主党党大会のメーンゲストとして呼ばれているなど、もはや扱いは文化人。74歳と高齢なのも分かっているが、体力のあるうちに、もう1度、グランドに舞い戻ってきてほしい。