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将棋とビジネスについて

 いまや、若い棋士たちはパソコンを使って過去の棋譜情報を収集している。仕入れた棋譜を綿密に研究して頭に叩き込み、実践に備える。

 同じようにアマチュア棋士たちもパソコンを駆使して情報を入手するという。

 もはや、将棋の世界では、プロもアマチュアも入手できる情報は質量ともに一緒になった。だから、アマチュアの技術は著しく向上し、これまでプロとは歴然としていた溝が埋まるほど急速に腕を上げている。

 

 では、その際、プロとアマチュアを分かつ一線とは何になるのか?

 私は、勝手に“こころ”の部分にあると考えた。「向上心」「闘争心」「克己心」など、“こころ”の強さこそ、プロとアマチュアの大きな隔たりになると。

 

 ところが、「将棋に闘争心は必要ない。喜怒哀楽の感情は、正常な差し手をするときにマイナスになることがある」と永世名人(十九世名人)・永世王位・名誉王座・永世棋王・永世棋聖・永世王将の棋士、羽生善治さんは“こころ”については、ほぼ否定している。

 羽生さんは、「定石をマネする側からつくる側に回りたい」と語り、情報も“こころ”も超越したところにプロとしての大事なものがあると言っている。

 

 うーん。情報でも“こころ”でもないとなると、カギを握っているのは、羽生さんや故大山康晴さんなど選ばれし者のみが持つ「才能」という普通の言葉に行きついてしまう。

 それじゃあ、つまらないと思うのだが、それほどまでに「才能」の壁は厚いということなのだろう。

 まあ、ビジネスの世界では、そうあって欲しくないものだけれども。