1月3日のブログで、「一羽めのペンギン」について書き、危地にも先頭を切って踏み込む勇気の必要性について記したが、なぜ必要なのか、わかりやすい例があったので紹介したい。
携帯音楽プレーヤーである。
市場調査会社のBCNによれば、2010年12月の日本国内販売台数で、ソニーの「ウォークマン」が米アップルの「iPod(アイポッド)」を抑えシェア1位となった。12月のウォークマンのシェアは52.1%と、アイポッドの42.9%を大きく上回っている。ウォークマンが月間シェアでアイポッドを抜くのは2010年8月に続き2度目のことだ。
ただ、前回の8月の場合は、翌9月にアップルが新製品の発売を計画していたために「アイポッドの買い控え」があったゆえの首位奪取と、ウォークマンの評価はそれほどでもなかった。
ところが今回は、何もない中でのガチンコ勝負で獲得したトップシェア――。
好調の理由は、①歌詞が見られる機能、②語学学習機能などが付加されたことにあると見られている。
1979年、ソニーが発売した携帯型ステレオカセットプレイヤーのウォークマンは大ヒット。「スピーカーのないプレーヤーは絶対に売れない」という社内の反対を押し切って、「一羽めのペンギン」になったのは盛田昭夫会長(当時)だった。
以後、ウォークマンは日本市場のみならず、海外でも雄飛を遂げ、「世界のウォークマン」として、わが世の春を謳歌した。
一方、アイポッドがマッキントッシュ専用のデジタルオーディオプレーヤーとして発表されたのは2001年。2002年に発売された第2世代ではウインドウズにも対応した。
そのソニーが、携帯音楽プレーヤーの「1羽めのペンギン」であるアップルに追い抜かれるまでは約20年。追いつくまでに要した時間は約10年。しかも、ソニーは、国内トップシェアの座を今後も維持できるか、どうかまだわからないし、北米・欧州市場では依然としてアイポッドの後塵を拝し続けている。
20年間、10年間――。
「1羽めのペンギン」はハイリスクかもしれないが、成功すれば、その創業利益は計り知れないことを示している。