いまや、アウトソーシングの名の下に、さまざまな業務を請け負ってくれる企業がある。人事、財務、会計、企画、総務、営業、販売、IT、物流…。ありとあらゆる企業の業務は、外注できるようになっている。
アウトソーシング先をうまく活用することは、現代の企業戦略にとっては、不可欠といっていい。また重要なものになっていると言えるだろう。
しかし、そこに経営者としての“信念”がないのであれば、アウトソーシングは“丸投げ”という言葉に堕落することになる。アウトソーシングは大事な道具ではあるが、“魔法の杖”ではないからだ。
先日、テレビで不振店舗を改装してオープンさせるまでのルポルタージュを流していた。ある経営者が敏腕コンサルタントにリニューアルを依頼し、素晴らしい店舗に再生させる、という内容だ。
だが、画面を通じて見えてきたのは、その経営者はコンサルタントに“丸投げ”しただけ。彼の実績といえば、敏腕コンサルタントを探し依頼したということのみだ。計画策定期間中は、コンサルタントの主張に押されっぱなしで、最後まで彼の“信念”を見ることはできなかった。
経営者の役割のひとつは、自分の“信念”を具現化することにある。だから同じコンサルタントを師と仰いでも、実際の店舗や売場は同じにはならない。そして、それが、その企業の存在意義になる。
と、ここまで書いたところで、その経営者からの反論を思いついた。
「わが社の“信念”はアウトソーシング。“丸投げ”こそが企業戦略なんですよ」。
「なるほど!」と膝を打つ私――。
でも、それではあまりに寂しいよな。