この5月縲怩U月から、食品スーパー(SM)業界は復調の兆しを見せている。気温が高かったことに加え、サッカーワールドカップの特需が好調を支えた。
流通業各社は、“低価格競争疲れ”によって価格訴求一辺倒を見直し、消費者は“節約疲れ”からちょっと良い商品を買うようになっていることも好調を支えている一因だ。
ただ長期的、構造的に見た場合、SM業界には、必ずしも順風が吹き続けるとは限らないので要注意だ。
問題の1つは、少子高齢化だ。日本の総人口が減少し、食べ盛りの子供達も減少する。将来に向けて、食品市場の縮小は必至である。
2つめは、オーバーストアの問題だ。人口が減少しているにもかかわらず、大手SM企業を中心に出店意欲は旺盛だ。日本リテイリングセンター(東京都)が発表している「ビッグストア(年商50億円以上)統計」によれば、2009年度末におけるSMの店舗数は9642店舗、日本型スーパーストア(大型“スーパー”小売業の総称)は2543店舗で合計1万2185店舗。日本の人口を1億2000万人とすると、すでに9848人に1店舗のSMが存在することになる。SMの1店舗当たりの必要商圏人口は2万5000人縲怩R万人と言われるから、革新なき企業の淘汰は免れないということだ。
そして3つめは、同質化の問題だ。モノマネによる売場づくり、ベンダー依存型の売場づくり、仕入れ先を変えない商品政策が横行する結果、SM企業各社の売場には、大きな違いが見られなくなっている。もちろん、ここからの脱却を狙って、自主マーチャンダイジング(商品政策)に力を傾けている企業も散見できるが、総じていえば、類似性の高い売場が多い。
その意味では、SM業界には追い風が吹いているけれども、常に荒天に備える必要がある。