最近まで多くのレジメーカーは、レーンレジの基礎的なイノベーションは終わったものと考えていた。
レーザースキャンでバーコードを読み取り、精算する――。
さらなるスピードアップやチェッカーの使いやすさといった点では改善の余地があるものの、基礎技術は成熟の領域に達したと考えていたのだ。
ポストレーザースキャンのレジ技術として各社が期待を寄せていたのは、RFID(Radio-frequency identification:ICタグ)である。
電波を受けて働く小型の電子装置で、単品またはケースに取り付け、物流センターや店舗に読み取り装置を設置することで、流通過程でのロケーション情報を把握し、在庫や販売管理に生かす――。
国内小売業では三越(東京都/石塚邦雄社長)が婦人靴売場に導入した実例が知られている。RFIDを個品に貼付することで、販売・在庫管理の精度を高める効果を狙った。
ただ、RFID は単価高があだとなって、なかなか普及が進んでいない。
こうした状況下で、レジメーカーで唯一、既存の技術を否定し、RFIDとも異なるアプローチでレジ技術のイノベーションに努めてきたのが、東芝テック(東京都/鈴木護社長)である。CCDカメラでバーコードや商品そのものを読み込ませる技術開発に専心した。
サンマ、アジやバナナ、グレープフルーツといった商品をそのまま認識し、精算するという発想は、製品化され、同業他社に地団駄を踏ませた。
「なぜ、自分たちは思いつかなかったのだろう?」とライバル企業が反省したところで、もはや後の祭り。東芝テック方式は、さまざまな特許に守られ、すぐには追随できないという。
CCDカメラ技術の凄いところは、生鮮食品や総菜の値引きシールも読み込むことができることだ。従来、値引きは、別途、値引きバーコードをプリントアウトして商品に貼りつけるという煩雑な作業が必要だっただけに、労働生産性は著しく改善されることになる。
以前からこのコラムで書いているように、イノベーションとは、「なぜ、自分は気付かなかったのだろう」という技術に支えられているところが大きい。
「これ以上のモノはない」と思考を止めない習慣が大切だ。