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「落語」と「スーパー」にまつわるエトセトラ

スーパー大好き落語家として活動する立川志ら乃師匠。その特異なキャラクターを貫いてきた結果、スーパーに関わる大小さまざまなドラマに接するように…。今回は、最近開いた落語イベントで起こったスーパーにまつわるお話を3つお届け――。

オオゼキの魚介にいたく感動した林家彦いち師匠、スーパー打ち上げに協賛?

オオゼキはイカのことをよくわかっている!と熱弁を振るう林家彦いち師匠

 5月に開催した「下丸子らくご倶楽部」という落語会の楽屋で、林家彦いち師匠に話を振られました。

 「あれさ、あの~志ら乃が言ってたやつ…シモキタの…」
 「オオゼキですか?」
 「それそれ!この間初めて行ったんだよ!」
 「どうでした?」
 「オレさぁ、釣りするから魚が一番気になるんだけど、スゲー良かった、品揃えが予想を超えてた」
 「飲食店の方も仕入れで来るみたいですし、確かに珍しいものもあったりしますね」
 「今までさぁ、志ら乃のスーパーの話、正直そこまでちゃんと聞いてなかったんだけど、それがなんか申し訳なく感じたくらい良かったよ」

 …聞いてなかったのかよ!(笑)

 それはさておき、彦いち師匠からこんな提案が。

 「今度さぁ、オレが喜びそうなスーパー連れてってよ、ちゃんと金払うから」

 打ち上げ代が向こう持ちの「スーパー打ち上げ」はまだ開催したことがないので、彦いち師匠が鈴本演芸場、私が上野広小路亭で同じ日に出演しているタイミングを探し、一緒に「吉池」に行こうと思っております。

酒を飲まなくても、タバコを吸わなくても、スーパーが好きなだけで仕事が取れた!

 少し前の「日暮里寄席」の楽屋でのお話。この日は立川談四楼師匠から、

 「うちの弟子に随分食料を買ってもらっているようで…」

 と、お気遣いいただく。

 確かにだん子、縄四楼、半四楼と談四楼師匠のお弟子さんとスーパー打ち上げに行く機会はとても多い。

 「いえいえ…打ち上げを安く済ませているだけですから」
 「いやいや、奴らにとっては何よりのご褒美だよ」

 ありがたいお言葉をいただき恐縮していたのですが、さらには

 「地元群馬のスーパーでとりせんというのがあるんだけれども、そこが主催している講演会に出てもらえないか」

 と、談四楼師匠からお仕事をいただく流れに。 

 私は酒は飲めないし、タバコの煙を吸うとすぐに具合が悪くなるので、いわゆる「飲みニケーション」で仕事が発生することはまずありません。しかし打ち上げ会場をスーパーに替え、自分なりの打ち上げを試行錯誤していたら仕事につながったのです。

 人それぞれ、自分に合ったやり方で暮らして行くの大事。この境地に辿り着くまでに20年くらいかかりましたが、辿り着いて良かったと心の底から思ったのでした。

中二女子がスーパー打ち上げに参加!「グミ100個で家を建てたい」にしつこく疑問を投げかけるオジサン

 先日、「オトメカイ」というタイトルの落語会を主催しました。女性の俳優&声優が落語を演じるというイベント。そこに昨年から「将来声優になりたいので、その勉強の一つとして落語を習わせてもらいたい」と私のところに通っている中学二年生の女の子を前座扱いで出してみました。

 当日の会場は舞台下手(しもて)からしか出捌けができないのですが、一席しゃべり終えた後、間違えて舞台上手(うわて)に行ってしまい、舞台から出られないことに気付いた彼女は恥ずかしそうにUターン。小走りで舞台下手から舞台袖に消えて行くという、初々しさ100点満点の高座を務めました。

 そしてスーパー打ち上げにも、共演したお姉さん方に交じって彼女も参加。一緒に出演したお姉さん方がライフ深川猿江店内で、

 「しょうが半額ですって!! 師匠これ買ってもいいですか?」
 「師匠!これ私がCM出てる商品ですから買って下さい!」
 「うわ!このとり皮の総菜すげえ旨そう!」
 と、”オトメ”の正体を見せつけるなか彼女は、

 「初めて見るこのグミ買ってもいいですか?」

――さすが女子中学生。

 「グミ好きなの?」
 「好きです!100 個買って家を作りたいです!」

 そのコメントに皆、「あら、かわいい~」的な反応を示していましたが、 

 「家?だったら100個じゃ足りないだろ」
 「そうですね、100個買うお金が足りないので、いつか買える日が来るといいです」
 「いやいやそうじゃなくて、自分自身の体が収まるくらいのサイズの家をつくるなら、グミ100個じゃつくれないだろっていう話だよ」

 女子中学生の夢のお話にオジサンが理屈ぶつけてどうすんだって話ですが、

 「もしくは、100個っていうのは、具体的な数字じゃなくて『たくさん』という意味での100個なのか?」

 もう止まらない。

 「まあとにかく、次までにもう少し現実的なグミの数を考えといて」

 とむちゃくちゃな宿題を出す始末。

 後日、彼女のご両親からお中元でマカロン頂きました。ありがとうございます。

立川志ら乃

1974年2月24日生まれ。98年3月、立川志らくへ入門。2012年12月に真打ち昇進。16年7月に「スーパーマーケットが好きである」ことを突如自覚。スーパーに関する創作落語に「グロサリー部門」「大豆なおしらせ」など。寄席やイベントなどのスケジュールは下記Twitter・ブログをご参照ください。

Twitter:@tatekawashirano

ブログ:https://ameblo.jp/st-blog/