焦点:五輪直前、決断迫られるスポンサー 無観客が現実味

ロイター
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7月8日 東京五輪・パラリンピックの一部スポンサーが、大会運営側の判断を待たず、ブースなどの出展や接待プログラムの中止に動き出した。写真は6月21日、東京で撮影(2021年 ロイター/Pawel Kopczynski)

[東京 8日 ロイター] – 東京五輪・パラリンピックの一部スポンサーが、大会運営側の判断を待たず、ブースなどの出展や接待プログラムの中止に動き出した。複数の関係者によると、開幕が直前に迫り、新型コロナウイルスの感染状況や世論の動向から独自に決めざるをえなくなりつつある。

観客数の追加削減はもはや避けられず、無観客の現実味も帯びる中、スポンサー関係者の間には、特別枠で割り当てられた観戦チケットの使用をためらう声も出ている。

ブース出展見送り

事情を知る複数の関係者によると、キヤノンと東京海上日動火災保険は計画していたブースなどの出展を取りやめた。東京の台場や有明など臨海エリアの競技会場周辺にはスポンサーによる出展エリアが設けられる予定で、キヤノンは来場者の体験型撮影スポットを企画していた。

大会組織委員会(組織委)によると、スポンサーブースの最終的な参加企業リストを現在取りまとめ中で、出展エリア自体を閉鎖したわけではない。

しかし、スポンサー関係者の1人は、コロナの感染が再拡大する中、人流を増加させかねないイベントの実施は好ましくなく、自身らで判断せざるをえなくなっていると話す。組織委が自宅と会場の間だけを行き来する直行直帰を観客に求めたことなどもあり、「せっかく準備してきたが、こんな要請が出てしまっては立ち寄ってもらいにくい」と同関係者は言う。

ロイターがスポンサーブースの出展中止について問い合わせたところ、キヤノンの広報担当者はコメントを控えた。東京海上日動の広報担当者は「現時点でブース出展などは予定していない」と回答した。

一方、オメガとプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、感染対策の上でパビリオンを出展する。オメガの広報担当者は「予定通り進めている」とした。関係者によると、P&Gは東京大会の公式スキンケアブランド「SK─Ⅱ」のパビリオンを準備している。SKーIIの広報担当者はコメントを控えた。

ENEOSも今のところは十分な感染対策をした上でパビリオンを開設する方向で準備を進めている。ただ、同社の広報担当者は今後の対応について「組織委の指針に従う」とした。

関係者によると、組織委は7日午後、スポンサー向けに説明会を開き、政府が首都圏などへのまん延防止等重点措置を延長するなどした場合、完全な無観客あるいは観客上限をこれまでの1万人から半減させる2つのシナリオを伝えた。政府は8日夕、東京に緊急事態宣言を再発令することを正式決定する。

ある大会関係者は「無観客ならスポンサーのパビリオンやブースなどは中止せざるを得ないだろう。ただ、パラリンピック開催期間中に感染状況が改善すれば、再開する可能性はある」と話す。

何社がブースなどの出展を計画していたのか、ロイターは組織委に問い合わせたが、現時点で回答を得られていない。

これとは別にアシックスは、卓球日本代表の石川佳純選手を再現した高さ4メートルの巨大像の一般公開を見合わせた。東京・渋谷で披露を予定していたが、人が集まるのを避けるため取りやめた。同社の広報担当者によると、像は倉庫に保管してあり、いつどこで披露できるかは未定という。

接待プログラムも中止・大幅縮小

割り当てられた観戦チケットに宿泊やパーティーなどを組み合わせ、取引先を接待する「ホスピタリティ・プログラム」の中止を決めたスポンサーも増えている。

事情に詳しい複数の関係者によると、少なくとも14社が中止あるいは計画の大幅縮小を決めた。味の素の広報担当者は、「昨今の状況を受け、独自の判断で取りやめた」ことを明らかにした。一般消費者向け観戦チケットのプレゼントキャンペーンも中止したという。パナソニックは、感染状況によっては「プログラムが変更・中止される可能性がある」(広報担当者)とした。

事情に詳しい関係者の1人によれば、6月末までは簡素化する流れが主流だったが、ここに来て一気に中止や縮小に動き始めた。セルビアやウガンダなど来日した選手団の中から陽性者が出ており、同関係者は「世論がこれは許さないだろうとの判断で、各社は中止に動いている」と語る。「『行くも地獄、引くも地獄』という感じだが、各社で決め始めた」。

ロイターは接待プログラムについても組織委にコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。

開会式などでの無観客が取りざたされる中で、スポンサーが社内で利用する予定だったチケットの扱いも宙に浮き始めている。閑散としたスタンドで観戦する社長などの姿が映れば、世論の批判にさらされかねないなどの懸念があるためだ。

あるスポンサー関係者は、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップに言及。「テレビカメラが観客席をズームアップし、そこにいた有名人の顔がはっきり映っていた」と話す。「あんなにアップされると確実に悪目立ちする。企業イメージにも響きかねず、行くべきかどうか悩んでいる」と打ち明ける。

別のスポンサー関係者によれば、一部企業はなるべく多くの一般客が観戦できるようチケットの返上も検討し始めている。観客上限が見直されているにもかかわらず、スポンサーが出席することは「正当性に若干欠け、フェアではないと感じている人もいる」と話す。

トヨタ自動車は「チケットの中のやりくりの詳細については回答を控えたい。ただ、選手の応援に力を入れるのは、われわれのスタンスとしてある」(広報担当者)とコメントした。

東京五輪スポンサーは国内企業だけで60社以上あり、昨年7月の開催に向けた契約額は五輪史上、過去最高の約3300億円に上った。1年延期されたことに伴い、総額220億円相当の追加拠出を求められ、昨年12月には全社が契約を更新、総額は3500億円を超えた。

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