景気判断、2地域引き上げ ワクチン普及で企業は消費に期待=日銀

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7月5日、日銀は地域経済報告(さくらリポート)を公表し、全9地域中、北陸・近畿の景気判断を引き上げた。写真は都内で2015年5月撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 5日 ロイター] – 日銀は5日、地域経済報告(さくらリポート)を公表し、全9地域中、北陸・近畿の景気判断を引き上げた。近畿はアジア経済の回復が追い風となった。新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるものの、多くの地域で「基調としては持ち直している」または「持ち直しつつある」と総括した。ワクチン接種の進展でサービス消費が持ち直すことへの期待感が企業の間で強まっているという。

景気の総括判断を引き上げた北陸と近畿は、電子部品や生産用機械の生産や設備投資が好調だった。会議後に記者会見を行った高口博英大阪支店長(理事)は、関西はアジア、特に中国やNIEs(新興工業経済地域)諸国との取引関係が強く「海外経済の回復の影響を、全国に比べていくぶん強めに受けている」と指摘した。

一方、総括判断を引き下げた中国と四国について、リポートは「持ち直しのペースが鈍化している」と表現。中国は個人消費と生産、四国は個人消費の判断をそれぞれ引き下げたことが影響した。

需要項目別の生産では、北陸・四国の2地域で判断を引き上げた一方、中国で判断を引き下げた。中国地方は、ウエートの高い輸送用機械について前回は「持ち直している」としていたが、今回は「持ち直しが一服」とした。半導体不足の影響が出たという。

林新一郎名古屋支店長は自動車の生産・輸出について、足元では横ばい圏で推移しているものの「被災工場の復旧が進み、半導体不足も徐々に和らぐ傾向にある。今後は増加が期待できる」と話した。

企業からは「輸入木材の需給の逼迫を受けて仕入れが難しくなりつつあり、今後、集成材の生産調整を行う可能性がある」(岡山:木材・木製品)との声も出ていた。

設備投資は、北海道・東北・北陸・近畿・中国の5地域で判断を引き上げた。宿泊など一部業種から引き続き弱い声があるものの、それ以外では売り上げの増加や業績改善を背景とした投資の声が聞かれている。

進むワクチン接種、個人消費への影響は

個人消費は中国、四国、九州・沖縄の3地域で判断が引き下げられた。企業からは、新型コロナワクチンの接種が進んでいることで消費意欲の高まりに期待する声も出てきているという。リポートでは、ワクチンの普及で感染症が収束に向かえば、Gotoキャンペーンなど政府の需要喚起策の再開も後押しする形で「これまで抑制されていたレジャーへの支出が爆発的に増加する可能性がある」(前橋:対事業所サービス)といった指摘も見られた。

石井正信札幌支店長は会見で「先行きワクチン接種が進んでいけば、対面型サービス消費の回復が期待される」と述べた。

高口大阪支店長は、関西の個人消費について、緊急事態宣言からまん延防止等重点措置への移行やワクチン接種の進展で回復していると指摘。前回4月のさくらリポート公表時と「おおむね同じ水準に近づきつつある」との見方を示した。

一方、冨田淳福岡支店長は「ワクチン接種で先行している地域において、消費態度で明確な変化はまだ見られない」と述べた。ワクチン接種進展による消費回復への期待感は企業サイドで強く、夏休みの帰省などに備えた動きが強まっていると説明した。

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