アングル:日経平均は本当に割安か、ソフトバンクG次第のPER

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日経平均株価で指数採用企業の利益の何倍の水準にあるかを示す予想PER(株価収益率)が低下したことで、株価の割安感が市場では意識されている。写真はソフトバンクのロゴ。都内で2月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 2日 ロイター] – 日経平均株価で指数採用企業の利益の何倍の水準にあるかを示す予想PER(株価収益率)が低下したことで、株価の割安感が市場では意識されている。ただ、採用企業には「規格外」の利益を出しているソフトバンクグループ(SBG)が算入されているため、同社の業績次第で日本株のバリュエーションが大きく変わるとの指摘もある。

全体利益の2割

SBGの2021年3月期純利益は、日本企業として過去最大の4.9兆円。日経平均採用企業全体の純利益23.3兆円のうち、SBG1社で21%を稼ぎ出した計算だ。あまりに大きくなったことから日本企業全体のトレンドがみえにくくなっており、SMBC日興証券ではSBG抜きの業績データを算出している。

PERなど株価のバリュエーションを測る上でも、SBGは悩ましい存在だ。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、このSBGの存在が「日経平均の予想PERをより低く見せている可能性がある」と指摘する。

予想PERのベースになるのは今期の会社予想だが、SBGは業績予想を示していない。株式投資などが主力となったSBGの業績は市況次第の面が大きく、市場の予想はかなり分かれている。

日経新聞が算出する日経平均株価の予想PERは13.9倍(5月31日)。同社サイトの会社情報ではSBGの今期純利益予想を前期とほぼ変わらない4.5兆円(5月13日時点)としており、これを用いているとの見方が市場では多い。

一方、IBESがまとめたアナリスト12人によるSBGの22年3月期純利益予想の平均は1兆0820億円。これを前提にすると、井出氏の試算では予想PERは15.8倍になる。予想利益を2倍の2兆円とする場合でも、予想PERは15.2倍になる。

日経平均の過去のデータをみると、予想PERは15倍程度を中心に14─16倍のレンジで推移している。日経新聞ベースの13.9倍では下限付近で割安感が出るが、IBES予想に基づくと、上限に近いレンジに位置することになる。

上方修正期待

SBGの影響を除いても、日経平均には割安感があるとの見方も出ている。今期は業績予想の上方修正期待が大きいためだ。日本企業はもともと期初の会社予想を慎重に示すことが多い。とりわけ今年は、コロナ禍の影響で各企業が例年よりも慎重に業績予想を出している可能性があるとみられている。

三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、決算シーズンは会社側の予想が市場の期待に届かず株価の低調な動きが続いたとし「ワクチン接種が進んで経済活動が元に戻る兆しが見えてくれば、中間決算あたりでの上方修正を織り込んで株価は上がっていく可能性がある」と指摘する。

経済が正常化に向かえば、PER16倍が上値めどと意識されやすくなる。ニッセイ基礎研の井出氏の試算では、SBGの純利益予想が4.5兆円でその他の日経平均採用企業の業績予想が5%上方修正される場合、PER16倍の株価は3万4400円。SBGの利益予想をIBES予想並みとしても、その他の企業が5%上方修正すれば、PER16倍時の株価は3万0600円になる。

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