焦点:世界で出遅れる日本株、TS倍率はアベノミクス前に逆戻り

ロイター
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都内の東京証券取引所
4月30日、世界の中で日本株の出遅れが目立っている。写真は都内の東京証券取引所で昨年10月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

[東京 30日 ロイター] – 世界の中で日本株の出遅れが目立っている。米国株との比較ではアベノミクス前の水準に戻ってしまった。足元では新型コロナワクチン接種の遅れなどが指摘されているが、長期的には日本の成長期待低下が要因だ。日銀のETF(上場投資信託)買いが遠因になっているとの見方もある。

TS倍率は過去最低

TOPIXをS&P500で割ったTS倍率は、日本株と米国株の相対感を示す。1987年のピークには9.35倍を付け、TOPIXがS&Pを大きく上回っていたが、バブル崩壊後は長期的な低下傾向が続いている。

アベノミクス初期の13─15年にいったん上昇に転じ、ほぼリーマン・ショック前の水準に戻った。しかし、その後再び、下落傾向に入り、足元では過去最低水準を更新する0.45倍まで低下している。

日本に対する期待感の低下が要因だと、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏は分析する。「アベノミクスへの期待で一時的に上昇したが、第3の矢である成長戦略が進まず失望感が広がった。人口対策も遅れている。日米の成長期待の差が株価の相対感に表れている」という。

日経平均とNYダウの比率であるNN倍率(ND倍率)でみても長期的な傾向は変わらない。対米株での低下は、米株の上昇スピードが速いためでもあるが、先進国23カ国の大型株と中型株で構成されるMSCIワールド指数とTOPIXの比率でも、同じような低下傾向が続いている。

日本株は昨年度、バブル崩壊後の高値を更新し、2020年度の上昇率はTOPIXが39.3%。日経平均は54.2%と過去3番目の上昇率を記録した。しかし、世界の株価上昇に引っ張られただけで、相対的な弱さに変化はみられず、むしろ足元は悪化しているというのが現状だ。

日本の低い成長期待

株価の低さは日本の先行きの成長期待の低さを示している。2013年からの異次元緩和を含むアベノミクスを経ても、低い成長率は変わらず、所得もほとんど増えなかった。失業率はコロナ禍でも低いが、潜在成長率は1%を割り込んだまま。物価もゼロ%付近をいったりきたりの状態が続いている。

OECD(経済協力開発機構)は2020年から2060年までの長期実質GDP(国内総生産)予想を出しているが、米国の110%に対し、日本は58%。OECD平均は110%、世界は160%。日本は46カ国中41位だ。

「超低金利と、超低金利を利用した財政拡張、超低金利による円安。3大痛み止め効果がだらだらと続き、競争力が低下した企業でも生き残ることができた。しかし、そのため経済の新陳代謝が進まず、成長力が低いままの状態が続いている」と、東短リサーチ社長の加藤出氏は指摘する。

足元では、新型コロナ対応の遅れが日本株のネガティブ材料になっている。3月までは、日本のコロナ感染者の少なさが評価され、TS倍率も上昇傾向にあった。しかし、ここにきて市場はワクチン接種率を景気回復期待と結び付けて株価を判断するようになっている。現時点の感染者が少なくても、感染拡大懸念が残る中では、経済抑制を続けなければならないからだ。

日銀ETF買いの弊害との声も

日本株が出遅れているということは、上昇余地が大きい「割安」水準に位置しているとポジティブに解釈することもできる。出遅れを解消するには、長期的には日本の成長率を高めることが不可欠だが、日銀がETF買いを止めることも1つの選択肢だと指摘する声もある。

中央銀行が株式を買うことを「良いか悪いかはともかく、需給的にプラスであることに変わりない」(国内投信の運用部長)と歓迎する投資家もいるが、「本当の企業価値が見いだせなくなる」(ヘッジファンドのファンドマネジャー)と、嫌気する声も少なくない。

外国人投資家の日本株買いは13年をピークに減少傾向にある。一方、それと反比例するように日銀のETF購入額(目標額)は年間1兆円から3兆円、6兆円と増加。日本株の買い主体は海外勢から日銀に交替した。

「株式益回りでみたリスクプレミアムは低下しており、日銀がETFを買う理由は乏しくなっている。日銀の保有株はいまや50兆円近くあり、ストック効果で株価下支え効果は十分発揮される。フローの買いはやめても影響は小さいだろう」と、ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏はみる。

日銀は3月の政策点検で、ETF購入の年間6兆円目標を撤廃し、上限の12兆円だけを残した。株価が急落したときには大きく買うが、年間の規模としては減少するというのが市場の見立てだ。日銀の買いが減れば、海外勢の買いは戻るのか──。その点をみる上でも、今年の需給動向は注目されそうだ。

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