焦点:宣言発令で1─3月GDPマイナスへ、コロナ前見通せず

ロイター
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千葉市内のスーパーで買い物をする人
2021年1―3月期実質国内総生産(GDP)は再びマイナス成長となる見通しだ。写真は、マスク着用でショッピングセンター内を通行する買い物客。2020年5月28日に千葉市内で撮影。(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon/File Photo)

[東京 15日 ロイター] – 緊急事態宣言の再発令を受けて2021年1―3月期実質国内総生産(GDP)は再びマイナス成長となる見通しだ。専門家の間でも従来予想を下方修正する動きが広がる。政府は20年度3次補正予算と、年度内成立を目指す21年度当初予算案で切れ目ない経済財政運営を行い、22年1―3月期にはGDPが新型コロナウイルス禍前の水準に回復すると見込むが、先行きはなお見通せない。

内閣府が15日発表した20年10―12月期実質GDP速報値は前期比3.0%増、年率換算で12.7%増と2四半期連続でプラス成長となった。戦後最大のマイナス成長となった4―6月期の落ち込みの9割強を取り戻した計算になる。

ただ、宣言再発令に伴う飲食店の時短営業や観光需要喚起策「GoTo」キャンペーンの停止で内需の柱となる消費が落ち込み、実質GDPは1―3月期に再びマイナス成長となる公算が大きい。経済分析が専門のニッセイ基礎研究所の斉藤太郎・経済調査部長は「年明け以降は対面型サービス消費を中心に、経済活動が落ち込むことは避けられない」とみる。

日本経済研究センターが実施したESPフォーキャスト2月調査(回答期間は1月29日から2月5日)によると、1―3月期の実質GDPは1月予想から4.48%ポイント下方修正され、年率換算でマイナス5.47%となった。

調査では、1月時点に比べてマイナス予想に転じる調査機関が増え、36人中35人がマイナス成長になるとみている。

暦年では11年ぶりマイナス成長

コロナ禍の実質GDPは20年暦年ベースで529兆1881億円となり、19年に比べて4.8%減少した。暦年ではリーマン危機後の09年以来のマイナス成長で、価格基準を15年暦年にあわせた単純比較で26兆余円を失った。

みずほ総合研究所の山本康雄・経済調査部長は「GDPを2021年度末(22年1―3月期)にコロナ前の水準に戻すには、遅れをとったワクチン普及に伴う集団免疫を獲得できるかが焦点となる」と指摘する。

「コロナ禍で訪日外国人による消費(サービスの輸出)がほぼゼロとなり、訪日客4000万人換算で約5兆円を消失した計算になる。GDPの約1%相当となる規模で、人の往来が戻らない限りは、この穴埋めは見通せない」とも、みずほ総研の山本氏は語る。

雇用維持や賃上げの動向も焦点となる。14年以降続く2%以上の賃上げ率を維持できるかは、その後の消費行動を左右しかねない。

政府は、新型コロナ対策や収束後の経済構造転換を見据えた経済対策を昨年12月に決め、裏付けとなる20年度3次補正予算と21年度当初予算を一体編成した。内閣府は21年度までに実質GDPを3%程度押し上げると試算するが、民間調査機関のコンセンサスは1%に満たない。

1―3月期GDPのマイナス観測も追い討ちとなり、与党からも「新たな補正予算を組むべきだ」(自民中堅議員)との声がくすぶる。21年度予算成立のめどが立てば、歳出追加を伴う経済対策を求める声が強まる可能性もある。

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