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戦後最悪の落ち込み幅、GDP識者はこうみる

都内の横断歩道を渡る人
8月17日、日本の4─6月実質国内総生産(GDP)は年率27.8%のマイナスとなった。新型コロナウイルスの感染拡大が直撃したためで、事実上、戦後最悪の落ち込み込みとなった。写真は2016年2月、東京で撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

[東京 17日 ロイター] – 日本の4─6月実質国内総生産(GDP)は年率27.8%のマイナスとなった。新型コロナウイルスの感染拡大が直撃したためで、事実上、戦後最悪の落ち込み込みとなった。識者の見方は以下の通り。

日本総研 副主任研究員 村瀬拓氏

諸外国に比べれば外出自粛の強制も緩かったので、同時期の米欧と比較してマイナス幅は小さい。だが、戦後最大の落ち込みとなり、新型コロナウイルスの影響で経済が大きく停滞した姿が示された。消費と輸出の減少が景気の落ち込みの主因となった。設備投資は事前予想を上回ったが、2次速報値では下振れる可能性もあり、注意が必要。

4―5月の緊急事態宣言時の落ち込みが非常に大きかったので、7―9月期はプラス成長になると見込む。ただ、新型コロナウイルスの感染者が再び増加し、7―8月の消費の回復が打ち止めになっている印象もある。秋以降の経済回復は、当初想定していた以上に緩やかなものになるだろう。

輸出についても、感染が再拡大している国もあるほか、米国でも消費に陰りが見え初め、回復ペースは鈍化する可能性がある。

7―9月期は、需要の低迷が長期化する点を企業が意識し始めるため、設備投資の下振れにも注意が必要だ。

最大のリスク要因は、感染拡大のコントロールに失敗し、緊急事態宣言が再び発令されること。緊急事態宣言が出されれば、2020年度ベースでGDP成長率はマイナス6―7%程度まで落ち込む可能性もある。7―9月期でプラスになったとしても、10―12月期に再びマイナス成長に陥ることも考えられ、感染者数の動向に左右される状況が続く。

秋以降は予想以上に信用不安が波及してしまうと企業倒産が増えることも考えられ、当初の想定よりも成長率が落ち込むだろう。

SMBC日興証券 チーフマーケットエコノミスト 丸山義正氏

消費と輸出を中心に大きく落ち込んだ。消費はサービスを中心に減少しているので、外出自粛や休業要請で消費の機会が失われたことが一番の要因だろう。

輸出については、1―3月期はインバウンドの減少が主因だったが、4―6月期は財の落ち込みが大きい。世界経済が止まってしまい需要が減退したことと、サプライチェーンの停滞が影響した。

7―9月期以降については、消費を中心に高めの成長を記録するとみている。個人消費以外の設備投資関連、貿易は足元ではまだ回復していないため、7―9月期の成長は消費がけん引していく格好になるだろう。

ただ、10―12月期以降は消費の回復ペースが落ち、新しい生活様式のもとで外食や宿泊は完全に需要が戻ってくるわけではないので、高成長が続く可能性は低い。

今後のリスク要因は、やはり感染の動向。今のところは、日本を含め先進国の多くは感染第2波が広がっても、医療提供体制が立ち行かなくなるという状況ではない。仮に再び度緊急事態宣言が出されたとしても、対応の仕方がある程度分かっているため、4―6月期のような落ち込みになるとは考えていない。

みずほ総研 主任エコノミスト 酒井才介氏

民間最終消費支出はマイナス8.2%で、コンセンサス対比で弱い数字になっているが、それ以外はおおむね予測通りの結果だった。

今回のポイントは、やはり消費と輸出。国内では緊急事態宣言の発出で外出自粛ムードが高まったほか、海外ではロックダウンの広がりがあり、個人消費と輸出が大幅に減少した。この2点が4―6月期GDPの大幅マイナスの特徴。

設備投資は、減少率はそこまで大きくはないが、7―9月期以降にかけて、足元の企業収益の悪化や感染再拡大のリスクを受けて投資需要が低迷し、マイナスが続くだろう。

7―9月期のGDPは前期比年率2桁程度の伸びになると予測している。だが、7―9月が堅調に推移するというよりは、4―6月期の落ち込みに対しての伸び率なので、水準として良いというわけではない。

今後のリスク要因は、感染再拡大と米中対立の2点。感染のコントロールに失敗して、主要国で再びロックダウンが行われたり、国内で緊急事態宣言が出たりすれば、4―6月期並みに経済活動が停滞する可能性があり、秋以降回復するというシナリオは崩れる。

米中対立では、ハイテク製品で一部の製品を中心に輸出、輸入を制限するなどの動きがみられる可能性もあり、それが汎用品に広がるリスクも考えられる。そうした不確実性が高まれば投資需要が下振れ、設備投資、輸出の停滞につながる。サプライチェーンの調整を迫られるなど、日本企業への影響も出てくるだろう。