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週末読書おすすめの一冊:初版は70年前。驚くほどこのコロナ禍と重なる「ペスト」は必見!

ペスト(新潮文庫)

ペスト
本体価格750円(税別)/新潮文庫

著者:アルベール・カミュ 著
宮崎 嶺雄 訳

 初版は実に70年前。フランスの作家、アルベール・カミュの「ペスト」が世界中で売れているという。もちろん、このコロナ禍の中でさまざまなメディアで取り上げられていることも影響しているであろう。

 突然襲ってくる「不条理」に対し、人々のあらゆる感情、そしてそれに伴う行動が坦々と描かれている。70年前の時代背景は第二次世界大戦が終結して間もないころ。舞台はアルジェリア(当時フランス領)。

 この感情・行動が実に「コロナ禍」における現代と驚くほど重なる。”ひとたび市の門が封鎖されてしまうと自分達全部が(中略)すべて袋の鼠であり、そのなかでなんとかやっていかねばならぬことに、一同が気づいたのである。” 日本では厳格な都市封鎖は起きていないが、中国・武漢やヨーロッパの主要都市で起きたことは、まさにこの状況と重なる部分であろう。今まで当たり前にできていたことが急にできなくなる。この恐怖やストレスは、察するに余りある。

 また、”市民たちは明らかに彼らの身に起こったことを容易に理解しかねていた。別離とか恐怖とかいうような共通の感情はあったが、しかし人々はまた依然として個人的な関心事を第一列に置いていた” この描写は、不要不急の外出自粛と言われても、他者をリスクにさらしてまで日常を続けようとしてしまう、現代の日本にも強く重なる。

 この数か月で大きく状況は変わってしまった。そんな中でも、この突然の「不条理」に戸惑いながらも必死に抗う市民や医療従事者、そして行政。いま、このコロナ禍をより強く生き抜くためのヒントが、70年前に発刊された「ペスト」に多く得ることができる。

 

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