[東京 28日 ロイター] – 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、政府が緊急事態宣言を発出した後も、銀行の店舗を訪れる利用客が途絶えない。根強い現金主義に加え、在宅勤務の普及で時間的な余裕が生まれたことも一因とみられる。大型の貯金箱を持ち込んで大量の硬貨を入金する客もおり、人手の薄くなった銀行は対応に頭を悩ませている。
都内にある三菱UFJ銀行の東中野支店には、緊急事態宣言前と変わらず、断続的に利用客が訪れている。同支店では、新型コロナウイルス対策で、1日に出勤する従業員数を3分の2程度に抑えているが、利用客の数に大きな変化はみられないという。
通帳の繰り越しのために同支店を訪れた56歳の女性は「テレワークで時間に余裕ができたから」と話す。
在宅勤務を取り入れる国内の企業は増加基調にある。NTTデータ経営研究所によると、在宅勤務に取り組む企業は4月時点で約4割と、1月の18.4%から倍増した。
社会インフラを担う銀行は、緊急事態宣言の後も原則として通常営業を続ける。三菱UFJ銀行の4月の来客数は、緊急事態宣言の前後で約10%減、三井住友銀行とみずほ銀行では約15%減となった。ただ、住宅街では来客数がむしろ増えた店舗もあったという。
「大量の硬貨が入った大きな貯金箱を持って来て、口座に入金する方もいた。個人的には不要不急の用件にも思うが、銀行側が判断できるものでもない」と、ある大手行の支店長は打ち明ける。
根強い現金主義も背景にありそうだ。経済産業省によると、日本のキャッシュレス決済比率は2016年時点で約20%と、韓国の96%や中国の66%と比べて低水準にとどまる。
冒頭の東中野支店に年金を下ろしに来たという79歳の女性は「キャッシュレスには抵抗がある。歳を取ると現金が一番安心する」と話した。