首都圏大予測(光文社新書)
本書は著者による大規模な調査や、長年のフィールドワークによって培われた「忖度なし」の将来予測である。
ステレオタイプの街のイメージは、大手デベロッパーや「そうありたい」行政側の意図で作られている。では実際、本当に人気のある、住みたい街とは?よくある調査のとおり吉祥寺なのか?千葉ニュータウンなのか?華やかなイメージの「ミナト・ヨコハマ」なのか?
著者による調査結果からは、どうも別の顔が見えてくる。
評者は埼玉県南部に住んでいるが、浦和エリアに関する考察は大いに共感するものである。「文教都市」を謳っているが、著者が指摘するように駅に隣接する書店にはビジネス書・実用書が積み上げられているし、教育の重要な構成要素である「教養」に関する住民の関心はあまり高い方ではないようだ。このことは著者の調査結果からも見えてくる。現実は東京に働きに行く「ビジネスパーソン」が住まう町。そして、利便性の高まりや首都圏一局化の流れに乗って人口の流入が著しい昨今、この流れはより顕著になっていくだろう。著者による調査結果によって現在の流れの裏付け、そして近未来の将来像が見えてくる。
いまなぜ北千住が注目を集めるのか?東京都から埼玉県への流入(流出?)が増えている要因とは?横浜はなぜIRを招致するのか?
もう20年すると1人暮らし世帯が40%に達するという中で、街の姿・形は変わり続けている。今後、首都圏はどのように変革を遂げるのか。本書はマーケティングに携わるビジネスパーソンにとって、多くのヒントが見つかりそうだ。