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『eクチコミと消費者行動 ~情報取得・製品評価プロセスにおけるeクチコミの多様な影響~』

『eクチコミと消費者行動 ~情報取得・製品評価プロセスにおけるeクチコミの多様な影響~』

消費者は商品について判断する際、他者のクチコミを参考にすることが少なくない。対面でのクチコミでは、同時に1人の情報発信者から肯定的、または否定的な内容のいずれかしか得ることができない一方、インターネット上で展開される「eクチコミ」では、複数の情報源から発信されたポジティブ・ネガティブな内容を同時に入手することができる。本書は、eクチコミが消費者の購買行動にどのような影響を与えるかを分析した研究書である。

一般的に、ある商品に対して否定的な意見に触れれば、その商品に対して悪い印象を持ちやすくなると考えがちだ。しかし、ある一定の条件下では、ネガティブなeクチコミがその商品に対する消費者の評価を高くする場合があることを、本書では実験で明らかにしている。

たとえば、eクチコミの対象が、映画や音楽作品など個人的な感じ方や満足感によって評価される「快楽財」では、否定的なeクチコミが一定の割合で含まれているほうが、その製品に対する評価は高くなる。

一方、家電製品や医薬品など製品の機能やパフォーマンスによって評価される「実用財」では、否定的なeクチコミが含まれていないほうが、評価が高くなるという。

また、商品を掲載しているウェブサイトが、その商品を開発している企業が自社運営するECサイトの場合、否定的なeクチコミがまったく含まれていないと、消費者はその商品に対する信用度を下げるという。これは、自社運営のサイトではクチコミの内容が操作されているのではないか、あるいはクチコミ投稿者に報酬を渡し、高い評価を書いてもらっているのではないかと閲覧者が疑うためだと筆者は主張している。

近年、リアル店舗を展開する小売企業のなかにも、ECでの売上拡大をめざしている企業が増えている。本書を読めば、消費者の製品評価においては、肯定的な内容だけではなく、否定的なeクチコミの存在も重要だということを認識することができるだろう。

『ダイヤモンド・チェーンストア』2020年4月1日号掲載)