焦点:感染阻止と経済活動、日本が直面するジレンマ

2020/03/07 10:00
ロイター

東京都内の証券会社前
新型コロナウイルスの感染拡大防止を徹底すれば、経済活動への影響は避けられない。そんなジレンマの中で、政府は10日にも緊急対応策の第2弾を打ち出す。 写真は東京都内の証券会社前。2月28日撮影(2020年 ロイター/Athit Perawongmetha)

[東京 6日 ロイター] – 新型コロナウイルスの感染拡大防止を徹底すれば、経済活動への影響は避けられない。そんなジレンマの中で、政府は10日にも緊急対応策の第2弾を打ち出す。識者はこの対策について、学校休校やイベント自粛などの感染防止策がもたらす負の影響への止血剤に過ぎないと指摘する。与党からは経済対策として大胆な財政出動を求める声も浮上するが、治療薬やワクチン開発、医療機関支援など根本的な対策を優先すべきとの声もある。

<緊急対策に一定の理解、感染阻止がより重要>

新型コロナウィルス感染拡大に対する政府の緊急対応策第2弾では、安倍晋三首相が指示した全国一律休校に伴って休業を余儀なくされた事業者や従業員への雇用調整助成金拡充、所得補償、学童保育への支援拡大、中小事業者への新たな金融支援制度、PCR検査への保険適用やマスク増産体制への支援措置などを盛り込む見通しだ。

日本総研理事の山田久氏は「経済活動が大きくスローダウンしても、感染拡大防止を優先することが、中期的な経済にはプラスになる。そのうえで、経済活動自粛による二次災害が起こらないよう、資金繰り対策や雇用調整助成金の活用など、企業への万全な支援策を講じることが重要」と一定の理解を示す。ただし、あくまで緊急対応であり正常化への「出口」として期限を明確することが前提だとしている。

第一生命経済研究所の熊野英生・主席エコノミストも「今回の予備費活用での対策は、いわば止血に過ぎない」と指摘。本来は、国民の不安への対応や、新型コロナ治療薬開発への大胆な支援、PCR検査のボトルネックを解消する策など、医療専門家の知見を活かした感染対策にもっと早く打ち込むべきだったと指摘する。

安倍首相はまた、感染拡大防止のため、外出自粛や興行中止などを要請できるよう、「緊急事態宣言」を可能にする法整備への協力も野党に呼び掛けている。

しかし、政府関係者の一人はこの1─2週間で徹底してやるべきことは検査の拡大による感染者の徹底的洗い出しと隔離だと指摘。それを中途半端にして「やみくもに自粛を呼び掛けて経済を止めると、傷は深くなるだけだ」と懸念を示す。

政府の対応策が逐次投入となっていることについて、政権内からは「新型コロナは影響がどこまで広がるか、どの程度長期化するかわからないので、対策は逐次やるしかない」(閣僚周辺)といった声がある。熊野氏は「経済活動の維持を優先するか、感染阻止を徹底的にやるか、という選択のジレンマがあることを首相もわかっているのだろう」と理解を示す。

<自粛期間、長期化なら景気の基調に変化>

ただ、経済活動の自粛が長引けば、それに伴う景気下押し圧力が大きくなることは、東日本大震災後の消費動向など記憶に新しいところだ。きっかけは外的なショックでも、それによって需要の著しい低下や雇用情勢の悪化が生じる。

経済官庁幹部は「外出自粛によるサービス業への打撃が大きく、当初想定より景気は悪化している」として1─3月期はマイナス成長が避けられないとみている。

エコノミストの間でも1─3月期のマイナス成長はほぼコンセンサスだが、4─6月までマイナス成長となるか否かについては、感染拡大の終息時期にかかってくる。

前出の官庁幹部は、政府が瀬戸際とした2週間である程度終息が見えてくれば3月15日をめどに「終息に向かいつつある」と首相が宣言できると見通す。生産活動も3月半ばまでは在庫でしのぎ、中国での工場稼働率が上がるにつれて輸入も正常化し、挽回生産が期待できるとの読みがある。

しかし、感染拡大防止を重視するあまりに自粛期間が長引き、経済停滞が長期化する場合は、景気の基調も変わってくる可能性があるという。五輪中止という最悪の事態となれば、国民のマインドが相当落ち込み、消費はますます停滞していくと懸念する。

<経済界・政治家の財政拡大要求>

こうした中、財界や政治家から財政による景気刺激を求める声が高まっている。

経済同友会の桜田謙悟代表幹事は3日の会見で「景気の気を支えるという意味で、小出しではなく、過大と思われるくらいの支援を短期間、期限を決めて一気に行うことが大事だ」と強調。インパクトある財政出動を念頭に、テレワークなどの環境整備、ITシステム化への投資を積極的に促すような政策を打ち出すべきとしている。

自民党の岸田文雄政調会長も3日、安倍首相に必要に応じて補正予算を検討するよう求めた。世耕弘成参院幹事長は先月28日の定例会見で、20年度予算が成立すれば20年度予備費5000億円も活用できると強調。予備費で「足りない経済的インパクトがあれば迅速、機動的に対応する」と語っている。

ただ、熊野氏は「日本ではまだ感染拡大が抑制できる段階にもかかわらず、大げさな危機ととらえるとことで、財政の大判振る舞いをしたくてうずうずしている政治家のちょうどよい理由付けになってしまう」と危惧する。

日本以上に感染が拡大している韓国が4日発表した対策費は1兆円規模。中小企業融資に加え、感染者発見のGPS活用や隔離徹底と、診断強化にも重点を置いている。米議会下院が4日可決した追加予算案は総額9000億円。うち、3200億円以上がワクチンや治療薬の開発に、1000億円以上が医療施設の支援などに充てられる。

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