国民食ランキングで、必ずトップ10入りするのがカレーである。インド生まれなのに、独自の進化を遂げたことにより広く愛される料理になった。そんな日本で、カレールーの消費量が常にトップクラスなのが実は鳥取市。今回は、鳥取県を代表する観光スポットを訪れた後、人気のカレー専門店で食事をするという話だ。

日本でトップクラスにカレーを食べる鳥取市
鳥取県には定期的にやってくる。私が住む京都府からだと京都駅からJRで兵庫県の「姫路」駅まで、そこから特急列車「スーパーはくと」に乗り換えれば3時間前後で鳥取駅に到着する。
山陰地方は魅力的な地だ。出雲大社がある島根県は多くの神話が伝わるが、鳥取県も同様で有名な「因幡の白兎」は、同県東部の白兎海岸が舞台とされている。まさに神話の国、何となくミステリアスなイメージが多くの人々を惹きつける。
また山陰は海に面しているため海産物も豊富。ごく普通の居酒屋でも、関西の都市部では考えられない、新鮮な料理を楽しめる。
と山陰地方、さらに訪れた鳥取県の魅力を紹介したのだが、実はほとんど観光をしたことがない。毎度、タイミングが合わず、仕事を済ませると日帰りで京都に戻るのが通常のパターンとなっていた。
だが今回は宿泊する機会を得たので、たっぷりと鳥取県を楽しんでやろうという企画である。
まず向かったのは、同県の象徴とも言える観光スポット。JR「鳥取」駅前からバスに乗り、約30分揺られて最寄りの停留所に着く。下車後、しばらく歩くといよいよ到着した。
そう鳥取砂丘だ。小学生の教科書にも載っていたので知っているつもりだが、実際来るのは初めてなので大興奮した。
いよいよ砂丘を歩く。やはり砂丘だけに、靴が砂だらけになる。とはいえ海に向かって歩き、風を全身に浴びていると、日頃の嫌なできごとなんてどこかへ吹っ飛び、爽快な気分になれた。
朝から活動したので、お腹が空いた。昼食をとることにする。再度、「鳥取」駅に戻り、目当ての店を目指した。向かったのはカレー専門店。
なぜカレーかと言えば、鳥取県の県庁所在地、鳥取市は日本で一番、カレーを食べるからだ(正確には総務省家計支出調査で、カレールーの消費量が2016〜2018年で1位、最新の2024年は新潟市、徳島市、山形市に続いて4位)。せっかく鳥取を楽しむのだから、やはり食事はカレーだろうと考えた。
行き先は「鳥取」駅から徒歩数分、商店街の中にある「木の香り」。店の前には、おすすめメニューや料理の写真が飾られている。
私は胸の高まりを抑え、ドアを開けた。
ユニークなスパイスとともに味わう「やくぜんカレー」
店内はこじんまりとしており、木の温かみが感じられる内装。昼時が過ぎており、お客は私ともう一人の女性だけだった。
早速メニューを一通り見て、「やくぜん牛すじカレー」とサラダを注文した。この店のメニューにはいずれも「やくぜん」がついている。漢字で書くと「薬膳」だが、中国の伝統医学である中医学に基づき、食材や漢方薬を組み合わせた料理を意味する。この店では、カレーを薬膳として提供しているようだ。
興味深いのはテーブルの一角に、各種のスパイスが置かれていることだ。「二日酔い」「胃腸虚弱」「激辛です」など、フタの部分に効用や特徴を説明したタイトルがついている。中には「恋愛」「人に疲れたみたい」というのもあった。自分が気になるものをかけ、食べるといいようだ。
最初、サラダが来て、7〜8分後に料理がやってきた。どうです、おいしそうでしょう。早速、スプーンで適量をすくい、口へ。思ったよりスパイシーではなく、食べやすく、深みのある味わいだ。慣れてきたところで「胃腸虚弱」とか「風邪気味かな?」と書かれているスパイスをかけ、味変しながら食べ進めた。そして完食。ふー、おいしかった。
食後、スマホでなぜ鳥取ではカレーがよく食べられるのかを検索した。すると、いくつかの理由が出てきた。
ひとつは「米どころだから」。鳥取県は古くから米の産地として知られ、おいしい米が手に入りやすい環境が、カレーと相性がよかったというもの。
「共働きが多い」というのもあった。全国でも共働きの家庭が多く、作り置きできる料理としてカレーが重宝された。またカレーの付け合わせとして定番の、らっきょうの生産が日本一という説も有力。どれも説得力があり、なるほどと思った。
お腹がいっぱいになり大満足である。私は幸せな気持ちで店を後にした。