ファンの皆さま、大変お待たせいたしました。スーパー大好き落語家・立川志ら乃の「スーパーマーケット徒然草」、ついに新作をお届けします。今回は、とある落語会に参加した女優・真下玲奈の「ミロ」への尋常ではない愛に触れた志ら乃師匠。影響されて気づけばミロを買っていたどころか、「真下玲奈がミロを紹介する動画を見る」というカオスな夢まで見る始末。しかしそんな真下玲奈が内に秘める魅力にも気づいたりして――。
東陽町の「タイヨー」で異様なテンションに
「ずるい!ミロが好きなのは私なのに!!」
人の心が動いた瞬間、その心の叫びは得も言われぬ緊張感や当人の生々しさを感じることができる。それも、他人からしたら実にどうでもいいこと、そんなに熱くなってどうするの?というような内容であればあるほど、当の本人だけが悶々とする姿は不謹慎ながら見ていて実に楽しいものです。
新進気鋭の若手女優、真下玲奈さんとの出会いは、以前お笑いコンビ「ラバーガール」の大水さん(メガネじゃない方)と落語会を開いた際、終演後楽屋に訪ねて来たのが最初。
「ちょうど落語に興味を持ち始めたタイミングで、知り合いの大水さんが落語に挑戦するということで来ました!私も落語やってみたいです!」
みたいなことをおっしゃったので、昨年から落語会に出演してもらっております。そして私の落語会に出るということは当然、前回お伝えした「スーパー打ち上げ」にも参加するという流れになります。
さて、とある日の落語会の会場は江東区文化センターの和室。じゃあスーパー打ち上げはすぐ横の西友(東陽町店)に行ったのかな?と思った方も多いかと思いますが、残念。この日われわれが向かったのはタイヨー(茨城県)の「イキイキ生鮮市場店」。
落語会には真下玲奈さんだけではなく、野口かおるさんや小松利昌さんなどの俳優陣も出演しており大人数でスーパーへ。タイヨーイキイキ生鮮市場店は、その名のとおり野菜や果物の”市場”を通り過ぎないと店の奥には進めません。店に入ればたちまちカゴが一杯になってしまうことがあるので要注意なゴキゲン店舗。
落語への挑戦を終えた開放感&もともと持っている“天然お調子乗り”な性格などが重なって、タイヨーでテンションが上がる真下玲奈。
「アボガドおいしそう!!みんなで買いましょうよ!」
「このソーセージ私大好きなんですよ!みんなで買いましょうよ!」
「これって前、(RAG FAIRの)土屋礼央さんが買ってたインスタントの焼きそばですよね?みんなで買いましょうよ!」
共演者がみな大人だったため、“みんなで買いましょうよおばけ”の術中にはまることはなく…と言いたいところなのですが、同行した数人の女性スタッフがその毒牙に。
衝撃!ミロを飲まずに「直接摂取」する女優・真下玲奈
買ったものを各々手に持ち写真でも撮るかと声を掛けたところ、真下玲奈を筆頭にミロの袋を手にする人が続々。
その時の写真を「#スーパー打ち上げ」を付けてツイッターに載せると、ネスレの公式アカウントが反応。「大切な打ち上げにミロも同席できてうれしいです」と手書きの手紙を写真に撮って返信してくれたのです。プロの広報、恐るべし。
「こんなことってあるんだ」と驚いていたら夜中に真下玲奈からラインが。
「ずるい!ミロが好きなのは私なのに!!師匠はミロを買ってないのに、師匠にだけお礼が来るのはどういうことなんですか!」と。
ラインでは収まらず、ツイッターでも真下玲奈がその思いをぶちまけると、やや強めのその気迫を感じたのかネスレ側が、
「真下玲奈様にもご愛好いただいているんですね。おいしく飲んでください」と優しくフォロー。
その対応に真下玲奈が”ご満悦ツイート”をしているのを見ましたが、真下玲奈という人は、実はミロを飲んではいないのです。牛乳に溶かして飲むのではなく、サジですくって直接摂取しているのです。確かに美味しさを堪能していますが、飲んではいないのです。「それくらい好きなんだ」と当人は言っておりますが、スーパー打ち上げで一緒にミロを買った人たちも「私もミロ大好きですが、直接食べたことはないですし、直接食べたいとは…」と口を揃えていました。
結局ミロを買い求め、変な夢まで見てしまった
しかしそんな執着ぶりを見せつけられた私は数日後、気づけばオーケー初台店(1月25日にリニューアルオープン)にてミロを購入しておりました。残念ながら直接食すという勇気はまだ持ち合わせておりませんが、真下玲奈の熱意が一人の落語家の購買欲を掻き立てたことに違いはありません。そんな変わり者の真下玲奈に対する私の印象は文章のおしまいのところにまとめましたので、気になる方はそちらも併せてお読みください。
さて突然ですが、「真下玲奈がミロを紹介する動画を見る」というおかしな夢を昨日見たのでそれを書き記しておきます。
やや真剣な表情で、
「私、ミロってそのまま食べるものだと思ってたんですよ」
サジで直接ミロを口に運ぶ映像。満面の笑み。
画面戻って、
「そしたら先日友達がうちに泊まりに来た時牛乳にミロを入れて飲み始めたんです…びっくりしちゃって」
手前で牛乳にミロを入れている友達の手元、その向こう側で驚愕の表情の真下玲奈。
「怖かったんですけど、彼女が帰ったあと、私も試してみたら…おいしくて!ミロってまだまだ可能性あるなって思いました(笑)」
「それから色んなミロレシピ調べるようになりました」
いろんなミロレシピに触れる真下玲奈。
「…でも、直接食べるのが一番好きかも(笑)」
ミロと笑顔がある毎日、ネスレのミロ。
以上です。
「まだまだ何か出てきそう」…真下玲奈という女優の魅力
ここからは真下玲奈さんに対する現時点での印象を少し。まず、彼女の「落語をやりたい」は本気でした。
その本気感は落語自体への興味というより、女優としての自分に襲い掛かってくる日々の不明瞭な不安に突き動かされての選択なのではないかと私は推量しております。会って喋ると、明るい天然女子という印象を受けますが、やはり落語は演者当人の「何か」が必ずと言っていいほど出てしまうもの。稽古の時にそのような”内側”があふれ出て来たことを今でもよく覚えています。
ピュアで頑固。この2つはうまく絡み合うといいのですが、長所を打ち消し合う要素でもあるようです。
純粋な気持ちでさまざまなことに興味を持ち、その中の1つがうまく行きそうなので「それをこうすればもっとうまく行くんじゃない?」というようなことを言われると、ちょっとしたこだわりから「いや、これはそういうことじゃないんで…」的なことで自ら発展的な未来を閉ざしてしまう。そしてその自分でもよくわからない小さなプライドについて自分自身思い悩む。そんな日々なのではないか?という印象。
ミロの件もそうですが、うまく周囲に伝えられないけれどもとてもおもしろい要素を当人が持っていることは事実。まだまだ何かが出て来そう。そして本当に出てくる出て来ないに関係なく、この「出て来そう」という雰囲気がこの人の魅力のひとつ。そう思ってます。
いずれにしても、現時点ではあまり裕福ではなさそうなので、ネスレ様、ほんの少しでいいのでお力添え願えないでしょうか。
というわけで、次回は立川志ら乃の「シーフードミックス」を盗んだ前座、立川縄四楼についてお話します。
立川志ら乃
1974年2月24日生まれ。98年3月、立川志らくへ入門。2012年12月に真打ち昇進。16年7月に「スーパーマーケットが好きである」ことを突如自覚。スーパーに関する創作落語に「グロサリー部門」「大豆なおしらせ」など。
Twitter:@tatekawashirano
ブログ:https://ameblo.jp/st-blog/