[東京 17日 ロイター] – 地球規模で温暖化対策が喫緊の課題となる中、途上国を含めて世界的なCO2削減を支援するため、技術開発を加速させようという取り組みが始まる。資金のない途上国に先進国の援助は不可欠だが、資金援助には限界もある。1月末に産業技術総合研究所が設立する「ゼロエミッション国際共同開発センター」は、先進国が横断的に技術開発を行い、問題解決につなげようとする試みだ。
「環境問題は途上国の問題」―――。国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)にも参加していた経済産業省幹部はこう話す。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が2020年から本格始動する中、今後は、目標をどのように引き上げるか、途上国への資金援助をどうするかに議論が移る、という。
世界全体で70%のCO2削減を行う際、既存技術だけで実現しようとすれば、2050年に年間800兆円をCO2削減に投じる必要があるとの試算がある。同幹部は「これを誰が負担するのか。先進国だけの負担は難しい」と話し、この負担を軽減することが、パリ協定を実効性のあるものにするカギになると指摘している。
「ゼロエミッション国際共同開発センター」を創設する背景には、途上国への援助を資金だけではなく、技術で行うべきとの考えがある。2010年以降にコストが下がったことで、途上国で一気に普及が進んだ太陽光発電などの例があるように、先進国横断で技術開発を進め、コストを大幅に削減し、それを途上国にも広げていくことを狙う。
「ゼロエミッション国際共同開発センター」は、政府が今月中にも取りまとめる予定の「革新的環境イノベーション戦略」実行のための中核的組織と位置付ける。梶山弘志経済産業相は17日の閣議後会見で「ゼロエミッションを超えるビヨンドゼロ、排出以上の削減を可能にする技術確立を目指す。国内外の関係機関と連携しながら、革新的なイノベーションの創出をけん引していくことを期待している」と述べている。フランスやドイツ、アメリカ、EUの機関と共同で、再生エネルギーや蓄電池、水素、人工光合成、カーボンリサイクルなどの研究を進める。
19年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェローがセンター長に就き、当初、100人程度の人員でスタート。最終的には、海外からの人材も含めて300―400人体制への拡大を想定している。