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展望2020:需要刺激の効果は一時的、供給力強化を=柳川・東大教授

柳川範之・東京大学大学院教授
柳川範之・東京大学大学院教授は、最近の大規模金融緩和と積極財政の組み合わせについて、その規模ではなく、供給サイドの低下という課題に働きかける有効な施策が打てているか、という点に注目すべきだとの見解を示した。写真は2018年2月、都内で撮影(2019年 ロイター/Kentaro Sugiyama)

[東京 23日 ロイター] – 経済財政諮問会議の民間議員を務める柳川範之・東京大学大学院教授は、最近の大規模金融緩和と積極財政の組み合わせについて、その規模ではなく、供給サイドの低下という課題に働きかける有効な施策が打てているか、という点に注目すべきだとの見解を示した。ロイターとのインタビューで述べた。単に需要を刺激する従来型の経済対策ではなく、今回はデジタル化や人材投資など将来の成長につながる施策が中心であり、一定の評価ができるとした。

同教授は、財政投入の規模や金利のマイナス幅ばかりが注目されていることに否定的な見方を示し、「むしろ財政資金がどう使われているか、金融緩和の恩恵がどこにあるのか、といった内容を見るべきだ」と主張する。

「今の日本に必要なのは、生産性や成長にいかに寄与するかといった供給サイドの強化だ。消費や設備投資に働きかけても、その効果は一時的。より中長期に日本経済に期待が持てる政策を実施しなければ、企業も家計も投資しなくなってしまう」と指摘。必要なのは「カンフル剤」ではなく「地力をつける施策」だと強調した。

その意味で、12月に安倍政権がとりまとめた経済対策では、民間・政府のデジタル化の推進、氷河期世代の支援などの人材投資といった、成長底上げに向けた内容が盛り込まれていると評価。

一方で金額的に規模の大きい国土強靭化の位置づけについては「評価は大変難しい」という。財源に限りがある中で、どの程度の財政資金投入が許されるのかという課題があるとみている。ただし、被災者支援は必ず必要であるほか、将来に向けた防災・減災は最近の災害状況からみて必要であり、財政資金を投入することも否定しえないともいう。

今後も大規模な自然災害が発生する可能性が高いことを踏まえれば、経済財政諮問会議での議論も経済財政政策にとどまらず「国土や自然災害との向き合い方を議論する局面に来ているかもしれない。街のあり方や人の居住地域、東京一極集中の是正など、限られた財政の中でテクノロジーを駆使してできることが、まだたくさんあるはずだ」として、多くの関係者を巻き込んで従来とは異なる視点での議論を展開していく必要性にも言及している。