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日本車各社、小型でEV普及加速へ 東京モーターショーで披露

ホンダの八郷隆弘社長
10月23日、「東京モーターショー2019」が23日報道陣に公開され、24日開幕する。写真は量産EV「ホンダ e(イー)」を披露するホンダの八郷隆弘社長(2019年 ロイター/Edgar Su)

[東京 23日 ロイター] – 「東京モーターショー2019」が23日報道陣に公開され、24日開幕する。日本車メーカーが試作車や市販間近の新型車を披露するが、特に注目されるのが電気自動車(EV)だ。その多くが小型で、トヨタ自動車とホンダは20年発売予定の市販モデルを展示。日産自動車は軽自動車(以下、軽)のEVを出展する。

EVはバッテリーなどのコストが高く、ガソリン車と同じ仕様を追求すると現時点では高級車並みの価格でないと採算が合わない。航続距離もコストを度外視すれば技術的にはいくらでも伸ばせるが、高価格では普及が進まない。各社とも、手頃な価格が実現できる近距離移動を想定したコンパクトな車でEVの普及につなげる狙いだ。

トヨタは軽より小さい「超小型」

トヨタは、軽より小さい2人乗りの「超小型EV」を出展する。価格は未公表だが、来年冬ごろに日本で発売する。車体は全長は約2.5メートル、全幅は約1.3メートル、全高は約1.6メートル。最高時速は60キロ。フル充電するには200V電圧で約5時間かかり、航続距離は約100キロにとどまるが、運転初心者や高齢者の日常の買い物などを想定して開発した。

このEVをベースにしたビジネス向けモデルも展示する。短距離の営業や巡回業務での利用を提案している。運転だけでなく、車内でノートパソコンを使ったり、仮眠したりすることも想定。車内で休憩する際には外からのぞかれないよう窓を半透明にすることもできる。

同社は、ガソリン車と同等の使い勝手が可能な環境対応車としてはハイブリッド車や燃料電池車が適していると考えている。開発責任者の谷中壮弘氏は、同じ技術ですべての運転ニーズを満たすのは難しく、「電気の強みが生きる小型の車をまず使ってみてほしい」と話す。

約100を数える自治体・企業などが、超小型EVの導入をすでに検討しているという。

日産は「軽」に手放し運転機能

日産は、街乗りを意識した軽規格のEV「ニッサンIMk」の試作車を初披露する。高速道路だけでなく、主要幹線道路にも利用範囲を広げて手放し運転ができる運転支援技術を搭載する。市販化の時期は明らかにしていないが、同社は10年に量産EV「リーフ」を投入し、EV市場を開拓してきた。他社が続々とEV投入計画を打ち出す中、日産は軽のEVでもリードする考えだ。

トヨタの超小型EVと日産のIMkは国内向けだが、将来的には環境規制が厳しくなる中国や欧州などの海外で販売する可能性がある。

ホンダも、都市型の量産EV「ホンダ e(イー)」を日本初公開。来夏に欧州で発売予定で、一部の国では先行予約を開始。欧州での価格は2万9470ユーロ(約350万円)から。車体は欧州仕様の「ジャズ(日本名フィット)」よりも小ぶりで、航続距離は約220キロ。コネクテッド技術やAI(人工知能)による音声認識機能も採用する。

日本勢の小型中心のEV展開は、今回のモーターショーへの出展を見合わせた海外勢とはやや趣が異なる。世界で最も売れているEV、米テスラの「モデル3」は5人乗りのセダンで、標準的なグレードでも価格は500万円台から、航続距離は約400キロ、最高時速は225キロ。フォルクスワーゲンやBMWなどの海外勢はテスラを少なからず意識したEVを投入しており、対照的だ。

経営コンサルティング会社ローランド・ベルガーのグローバル共同代表兼日本法人代表取締役社長の長島聡氏は、高齢化社会が進む日本で高齢ドライバーによる交通事故が相次ぐ中、「低速で近距離移動できるモビリティが注目されている」と指摘、今後も各社がさまざまな小型EVを投入するとみている。同社も、時速10キロで走る2人乗りのEVを今回のショーに出展する。