[東京 11日 ロイター] – トヨタ自動車<7203.T>は11日、2020年末に発売する燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」の開発最終段階のモデル車両を報道陣に初公開した。競合他社が環境対応車(エコカー)として電気自動車(EV)を中心に据える中、トヨタは新型ミライでFCVにも注力する姿勢を改めて示す。
トヨタは新型ミライでFCVの本格普及を図り、EVで先行する米テスラや、独ダイムラーのメルセデス・ベンツ、独BMWなど海外の強豪に対抗する構えだ。このモデル車両は、今月24日から開催する東京モーターショーで展示する予定。
チーフエンジニアの田中義和氏は、新型ミライについて「エコカーというだけではなく、新感覚の魅力ある走りを実現し、人々が本当に買いたいと思う車をつくりたかった」と述べた。その上で「普及に向けた大事なフェーズとなる。数が出せなければ意味がない」とも語った。
日本と北米、欧州の各市場に投入する予定だが、販売価格、販売台数の目標は明らかにしていない。
新型ミライでは、プラットフォーム(車台)を刷新したほか、燃料電池スタックや水素タンクなどの基幹部品もすべて新設計とし、レイアウトも変更した。航続距離は現行ミライの約700キロメートルから30%程度延ばした。乗車定員数も、現行の4人から5人に増やした。
FCVは水素を燃料とし、走行中は水のみを排出し、二酸化炭素(CO2)を出さないため「究極のエコカー」とトヨタは位置づけている。現行ミライは世界初の量産FCVとして14年12月に発売し、主要各国の市場に投入してきた。
ただ、8月末時点までの累計販売台数は世界で1万台未満にとどまる。FCV普及の妨げとなってきたのは、水素充填スタンドの不足や、高価格(約740万円)などだ。
国内での水素スタンドの拡充は自動車メーカーが協力して進めているほか、政府も後押ししている。新型ミライでは、生産コストの抑制も図る。現行モデルは手作業での組み立てだが、新型では通常の量産ラインで生産する。基幹部品の全面的な見直しのほか、20年代の本格普及に向けてミライ以外にもFCVのモデルを増やして量産効果もねらう。
現行ミライの生産ペースは年間3000台だが、先行きはバスなども含め世界で年間3万台規模のFCV販売を見込む。本格普及をにらんで、FCスタックと水素タンクの生産設備も拡充している。