あらゆるものが値上がりしている一方で、物価の上昇に給料が追い付かず、実質賃金は低下の傾向にあります。いまだ天井の見えない「値上げラッシュ時代」を切り抜けるため、家計の財布を握る主婦たちは、どのような視点で買い物をし、行動しているのでしょうか。連載第3回は、実際に3人の子を育てる主婦として日々やりくりに奮闘する筆者から見た精肉売場について紹介します。
なんでも値上げ時代の「精肉」の選び方
最近の値上げラッシュにより大きく負担が増えたと感じるものの一つが精肉です。精肉は、献立のなかでもメーン料理となる存在感のある食材です。筆者にも3人の子どもがいますが、育ち盛りの子どもがいればボリュームのある献立のためにも精肉は欠かせません。
ところが最近の値上げラッシュにより、以前と同じ金額では同じ量の精肉を確保することが難しくなってきました。5人家族の筆者の計算によると、食費の約半分は精肉や鮮魚といったメーン料理のための食材費です。つまり、精肉・鮮魚の値上げは、そのまま食費負担の増加に直結してしまうというわけです。そのため、最近は金額を重視すれば量を減らさざるを得ず、量を重視すれば食費が著しく増加する、というジレンマに悩んでいます。
一般的に、大人と同じ量の食事が必要な子どもがいるということは、食費だけでなく教育費といった別の費用もかかる時期にあたります。食材費が増加したとはいえ、食事にどこまでも費用をかけるわけにはいきません。
したがって、値上げラッシュだからといって極端に量が減っておらず、かつ高くなりすぎない、品質も落とさなくて済む、値段と量と味のバランスが「そこそこ」に整う精肉売場というのがとてもありがたいと感じています。
たとえば、最近の精肉売場では、これまで見ることのなかったような産地の外国産商品が増えてきたように感じています。しかし、これまでに見たことのない産地の商品だと、安全性や味の質はどうかと心配になり、価格が抑えられているからといってすぐに飛びついてよいものかと躊躇してしまいます。そうしたときに、安全性や味の質についての説明が売場にあると安心して買い物ができます。
また、単価が安めな大容量パックも重宝していますが、店舗によって取り扱いがある場合とない場合があります。定番の精肉であれば大容量であっても計画的に消費しやすいため、単価を抑えられるのであれば大容量パックはぜひ置いてほしい商品です。
とはいえ少量パックも残さず使い切りたい時には重宝します。少量パックから大容量のパックまで量のバリエーションがある売場が魅力的です。
献立のイメージがつきやすい売場に期待
低価格な鶏の胸肉やささみなどは、火を入れるとすぐに固くなってしまうため調理が難しく、調理法もマンネリ化してしまいやすい傾向にあります。食費を抑えるためにもっと積極的に利用したいとは思うものの、難しい調理法や手間について考えるとなかなか手が伸びないこともあります。
そのような時に、肉を柔らかくする調味料を売場近くに置いたり、売場で提案するレシピの種類を増やしてほしいとよく感じます。レシピの提案が行われていても、SNSなどでの見栄えはいいだろうとは思いますが、忙しい主婦からすると「面倒くさそう」と感じる献立が多く、個人的にはあまり参考になりません。もっと簡単に手早く調理できるようなレシピの提案があれば助かります。
焼くだけ、炒めるだけで一品が出来上がる加工済みの食材も、手間がなく簡単に調理ができて便利ですが、いつも同じ味付けばかりだとマンネリ化してしまいます。そのため、新しい味付けを求めて別の食品スーパーにいくことがあります。加工済食材も、味付けや調理法に変化が欲しいところです。
精肉は食費に直結しやすい食材であるために、手ごろな価格の精肉をどのようにおいしくいただくか、私も日々頭をひねっています。献立の中心になりやすい精肉で飽きのこない献立を作るには常に新しいアイディアが必要です。その売場にいつも同じ商品、同じレシピの提案しかないと正直飽きてしまいます。そういう意味では、精肉売場は「精肉を販売する場」ではなく「献立を販売する場」であってほしいと私は考えています。
値上げラッシュが続く昨今、できるだけ価格を抑えて精肉を購入したいものです。とはいえ、食材の安全性、量、味などの面で献立の質を落としたくないというのが主婦の本音ではないでしょうか。
手ごろな価格の精肉をどのように調理し献立を作るか、「安かろう悪かろう」でなく、安いものをどうおいしく調理をすればいいのか、そのヒントが見つかる売場づくりに期待しています。