「ピネライス」は、京都で高い人気を誇る洋食の名物料理。実は私も定期的に食べるファンの一人である。しかし、京都には競合する魅力的な食べ物がいくらでもあるので、他府県での知名度は決して高くない。この現状を憂い、今回、地元民の心をつかんで離さないユニークな料理を実食レポートする。
3種類の主役を一度に味わえる
京都市中心部の烏丸エリアは、銀行や証券会社といった金融機関、また有力企業のオフィスが集積するビジネス街。そこから東へほど近い場所にあるのが洋食店の「キッチンゴン」である。
同店Webサイトによれば、創業は1970年。先代の権藤吉彦氏がアメリカで修行後、二条城の北側、京都市上京区に小さな店を開いたのが起こり。2017年3月、京都の中心部で新設したのが現在の本店(同中京区)だ。なお店名にある「ゴン」は、権藤氏の最初の文字に由来する。
この店で圧倒的な人気を誇るのが、今回紹介する「ピネライス」。京都ではほとんどの人が知っている名物料理(だと、私は思っている)。誕生したのは昭和というから、少なくとも35年以上の歴史がある計算になる。
ピネライスと聞いても、どのようなメニューなのかピンとこないかもしれない。実はシンプルで、チャーハンの上にポークカツレツを乗せ、さらにカレーソースをかけたものである。
チャーハン、ポークカツレツ、カレーと言えば、どれも嫌いな人はいないだろう。大抵の人なら好物と答えるのではないか。とくに子供にとっては大ごちそうであり、それぞれ単品の食事としても成立する。つまり食卓では、十分に主役として通用する“スター”料理。それら3種類を、一度に味わえるのがピネライス最大の魅力である。
そこで思い出されるのは、今春、野球世界一を決めるWBCで、見事、優勝を果たした侍ジャパンだ。
同チームには、米大リーグで活躍する大谷翔平、ダルビッシュ有、さらに昨年、日本人選手として王貞治氏が持つホームラン記録を58年ぶりに更新した、「村神様」こと村上宗隆選手はじめ、スターが名を連ねていた。われわれは、毎試合、次から次へと惜しげもなく登場するスター選手のプレーに酔いしれた。
こう考えると、スター料理揃いのピネライスは、「京都洋食界の侍ジャパン」と言えるのではないだろうか。
最初は1つずつ食べることに
そして私は、キッチンゴン京都六角本店の前に立っている。あらためて外観を確認すると、大きな垂れ幕が掛かっており、そこに「洋食屋キッチンゴン」「京都名物 ピネライス チャーハンにカツのせカレーがけ」の文字が見える。基本的には洋食店だが、やはり人気料理を全面に打ち出し集客している。
入店する。間口は狭いが奥に長い、いわゆる京都らしい「鰻の寝床」の形状。週末になると長い行列ができるのだが、昼時を外したのですぐに座れた。
メニューを手に取ると、「豚肉の生姜焼きとカニコロ」「ハンバーグ」「デミオムライス」など多様な料理が並ぶ。だが手を挙げて店員を呼んだ私は、迷わず「ピネライスで」と伝えた。もう最初から注文することに決めていたのだ。
ピネライスと言っても、実はいろいろな種類がある。チャーハンがケチャップ味の「赤ピネライス」、同じくチャーハンがカレー味の「ドライピネライス」、そしてトッピングを工夫したものを含めると8種類が確認できた。さらにサラダやフライものと組み合わせたセットも充実している。チャーハンサイズも「スモール」「レギュラー」「スモール」から選べる。
ちなみに私のは、レギュラーサイズのプレーンなタイプである。
店内を観察しながら待つこと10分弱。私の前に、ピネライスが置かれた。あぁ、これですよ、これこれ。
最初から3種類を一気に食べるのもよいが、1つずついただくことに。まずはチャーハンだけをすくい、口へ持っていく。うん、おいしい。次はカレー、よし、なかなかいいぞ。最後はポークカツレツ。最高!そして3種類をすべて乗せて食べる。おー!これだ、これこそ侍ジャパン!!
その後は、あまりのうまさにスプーンが止まらなかった。そして完食。ふー、食べた、食べた。非常に満足である。
とまあ、今回はピネライスをいただいたという話である。ぜひ仕事や観光で京都に来たら、和食もいいけど、ぜひこの名物料理も食べてほしいと思う。