[東京 9日 ロイター] – 4─6月期の国内総生産(GDP)は外需の減速を内需が補い、プラス成長を維持したが、米中摩擦激化による外需の一段の悪化と、増税による内需停滞が重なるリスクも控える。増税対策やイベント効果で年後半にかけて景気は持ち直すとみてきた政府内でも、米国による対中制裁第4弾などで、不透明感は一層高まってきたとの見方が台頭。株価動向など市場のシグナルも注視し、経済対策の時機を見極めるべきとの声が出ている。
足元の高成長、内需が貢献
4─6月期GDPは中国やアジア新興国経済の減速を受けた輸出の停滞が足を引っ張ったものの、個人消費や省力化などの設備投資、公的需要の強さがけん引し、年率1.8%成長と予想を上回った。1%弱とみられる潜在成長率を大きく上回る数字に、茂木敏充経済財政相も「内需を中心とした緩やかな回復を示す結果」との認識を示す。
消費の強さについて内閣府では、10連休という一時的要因に加え、雇用者報酬が前期比で0.7%増と4四半期ぶりの高い伸びとなったことも背景にあるとみている。
企業の業績や景況感が悪化する中で、設備投資が3四半期連続で増加しているのはIT化や省力化が必須となっている経営環境を物語っている。
<対中追加関税、内需下支えは可能か>
ただ、外需の悪化を内需が支える構図がどこまで持続するか、不安材料もある。
7─9月期は、民間調査機関の予想でもプラス1%を超える成長が予想されている(ESPフォーキャスト調査)。長梅雨の悪影響に対し、増税を控えた駆け込み需要やラグビーワールドカップのイベント効果がある程度期待できるとの見方がある。
問題はその先だ。先々のリスク要因として民間エコノミストが挙げるのは対中制裁第4弾、米国景気、猛暑の影響、円高 消費増税などだ。
インパクトが大きそうな対中制裁については、米トランプ大統領が9月1日以降に中国からの輸入の残り3000億ドル分に10%の追加関税をかけるとの方針を表明。世界の金融市場の動揺を誘っている。日本にとっても中国やアジア向け輸出の停滞感が強まる上、円高進行による企業収益への影響も懸念される。10月には消費増税があり、内需への影響に加え、設備投資の見送りリスクもある。
内閣府幹部も「今回は駆け込み需要がさほど大きくないため、増税後も消費が大きく落ち込むことは想定していない」として、外需の悪化を内需が支える構図は持続可能とみているが、「不透明感はかなり高まっている」と不安をのぞかせる。
SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミスト・丸山義正氏は、世界経済の失速を通じて、日本経済は10─12月期に軽微な景気後退に陥ると予想している。
経済対策はリスクの中身で判断、市場変動を注視
リスク要因のうち、消費増税の影響については、政府内で追加対策に否定的な声がほとんどだ。「今すぐ対策を打っても効果は来年になってしまう。消費税に関してはすでに仕込んである対策として教育無償化やそのほかの対策を実行するために、まずは財源となる消費増税を実施することこそが経済対策になる」(経済官庁幹部)といった声が多い。
一方で政府は、6月に閣議決定した「骨太の方針」で、海外リスクが顕在化する場合には躊躇なく機動的なマクロ経済政策を実行する姿勢を示している。海外リスクの顕在化については「対応するのは当たり前のこと」(別の幹部)との声も多い。
政府の経済財政諮問会議のメンバーの一人は、骨太方針で示した経済対策については、財政政策なのか、金融政策なのか、あえてぼかしていると指摘。「リスクの内容が見えてから判断する」としている。
そのうえで「株価の暴落や為替相場の急変なども一つのシグナルになる。いつどんな経済対策を打てばよいのか、まずは海外リスク顕在化のタイミングを的確に測る」と話す。
(中川泉 編集:石田仁志)