「いつでも買い物ができる」「自宅まで届けてくれる」「送料はかかるが、実店舗とほぼ同じ価格で買える」など、さまざまなメリットがあるネットスーパー。それにも関わらず、利用率は3.7%(夕食のための食品購入先業態利用率/新日本スーパーマーケット協会「消費者調査2017」より)と驚くほど低い。事業者が取り組むべき課題はいろいろありそうだが、消費者も利用方法を工夫すると、いまあるネットスーパーの潜在力を引き出せそうだ。利用歴10年の、賢いワーキングマザーの使い方を紹介しよう。
働く主婦は「まとめ買い」が苦手!?
ネットスーパー利用が低い原因に
少子高齢化や共働き家庭の増加を受けて、2000年頃から大手食品スーパーによる参入が相次いだネットスーパー。ネットで注文を受けると、実店舗から商品をピックアップし、消費者の家まで届けるサービスは、売上減少に悩むリアル店舗の切り札になると期待された。
だが、約20年経ったいま、ネットスーパーの利用率はわずか3.7%(図表1参照)と伸び悩んでいる。この間に共働き家庭は50%から65%(※1)と激増したのに、どういうわけか。
新日本スーパーマーケット協会「消費者調査2017」によると、カテゴリー別の「ネットスーパーの利用意向」では、総菜が約15%ともっとも低く、次いで鮮魚、精肉、野菜と続く。ネットスーパーではこれら商品を買いたいと思う人が少ないことを意味する。さらに、同調査ではカテゴリー別の「ネットスーパーを利用しない理由」も調べており、もっとも多いのは、生鮮3品において「自分の目で見て商品が選べないから」が6割ともっとも多かった。一方で、「商品の品質に不安がある」と答えた人は同じ生鮮3品でも2割程度と低い。
流通経済研究所の調査で働く女性の9割が「買い物に行く時間が制限されることに困っている」と答えていること(※2)を考えると、商品の品質に不安を感じていない8割の中から、「時間もないし、ネットスーパーを利用しよう」という人がもう少し増えても良さそうだ。
これは筆者が取材を通じて働く女性たちから聞いた声だが、「一度はネットスーパーを試してみたけど、受け取りが面倒だった」「(受け取りが面倒だからこそ)まとめ買いしようと思うけど、そのぶんのメニューを考えるのが大変だった」という声が多かった。「今日、明日の夕飯に足りない物がわかったら、それだけを実店舗に寄ってサッと買ったほうが早い」と彼女たちは話す。流通経済研究所の調査でも、「買い物に行く回数を減らして、まとめ買いをするようにしている」と答えた割合は、専業主婦が33.2%だったのに対し、働く女性は23.5%と10%近く低い。一般的に時間がない働く女性のほうがまとめ買いをしているイメージがあるかもしれないが、実際は逆なのだ。
※1 2000年が50%で総務庁「労働力調査特別調査」より、2017年が65%で総務省「労働力調査」より算出。
※2 「有職女性の買い物に対する意識と行動の特徴――買い物行動に影響を及ぼす『時間的制約』」(流通情報2015年9月号)より。買い物に関する困り事について聞くと、「買い物に行ける時間が限られること」と答えたのは、正社員・派遣・契約社員で89.5%、パート・アルバイトは53.8%。専業主婦は27.8%だった。http://www.dei.or.jp/opinion/staff_pdf/ikeda07.pdf
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解決策は「メニューを考えずに、まとめ買い」それを可能にする裏技を公開!
解決策は「メニューは考えないで、まとめ買いする」
毎日の献立を考えるのは、意外と手間である。これをある程度まとまった期間、材料を無駄なく使えるように組み立てようとすると大変だ。
そこで紹介したいのが、「メニューを考えずに、まとめ買いをする」という方法。これはあるとても仕事ができるワーキングマザーが実践しているネットスーパー活用術だ。メニューを考えないことで、まとめ買いがラクになる。ネットスーパーも利用しやすくなるので、ぜひ、試してほしい。
彼女が利用しているのは、イトーヨーカドーのネットスーパー。利用歴は10年に及ぶ。品揃えが豊富で、商品の値段は実店舗と変わらず、特売品なども購入できるので、コストパフォーマンスがいいところが気に入っているという。送料は通常は300円(税抜き、以下同)だが、子育て支援で登録から4年間は100円だったのもありがたかったと語る。
買い方はこうだ。
「まずは特売品から欲しいなと思うものを買っていきます。次に果物、野菜、お肉、お魚など、定番の品を何も考えず、ポチポチしていきます。石鹸やシャンプー、洗剤などの日用品は、タブをクリックして探していくと大変なので、ブランド名で検索するとすぐに出てきます。とにかく頭を使わず買っていくのがポイントです」
受け取り時間は、家に確実にいる19:30~21:30に設定。10日~2週間分くらいの「まとめ買い」を一度に受け取っている。そして、精肉・鮮魚などについては、2、3日中に使うもの以外は冷凍保存するという。
レシピ検索し、家にある材料で献立を決定
AIスピーカーで調理中もラクラク
無計画に買った2週間ぶんのまとめ買い。それで、献立は成り立つの? という素朴な疑問が湧いてくるが、この点もまったく問題ない。
「朝のうちにメーン料理に使う肉や魚だけ、冷蔵庫に移して解凍していきます。そして、夕方帰ってきてから、ネット検索して家にある材料でできる料理をつくります」
たとえば、豚肉の薄切り肉を解凍していた日には、「豚バラ肉 レシピ」で検索する。すると、おいしそうな「チーズの肉巻きトマト煮込み」が出てきた。チーズもトマト缶も家にあったので、この日はそれをメインにすることに。これにコンソメスープと、レタス、キュウリなどをカットしたサラダをつけて出せば、栄養バランスが整った立派な夕食の出来上がりだ。
さらにネット検索は、画面付きのAIスピーカーを使うと、スマホのように手で操作する必要がなくラクだという。
「以前はスマホで検索していたので、画面をスクロールするために、調理中に手をあらって拭いたりする手間がありました。でも、AIスピーカーなら調理しながら、『次のページ』といえば済みます。とてもラクになりました」
まとめ買いのネックは、日持ちがせず、冷凍もできない、もやしやレタスなどの野菜だ。だが、こういったものだけ、週末など時間のある時に買い足しておけば、忙しい平日の夕方に買い物に行く必要はなくなりそうだ。働くあなたの頼もしいパートナーとして、ネットスーパーを活用してみてはいかがだろうか?
スーパーマーケット側としても、ネットスーパー上でまとめ買いを誘発する仕掛けを作りこむとともに、こうしたまとめ買い商品活用術のコラムを掲載したり、許可を得てリンクを付けることで、ネットスーパー利用を促せるようになるかもしれない。