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今や日本の国民食 チーズ消費量が伸び続ける2つの理由

チーズ
SMでも海外から輸入された本格的なナチュラルチーズが販売されるようになり、消費者が気軽に購入できるようになっている

9割超が「好き」と回答
自宅で楽しむ人も増加

 昨今、チーズ人気が最高潮を迎えている。農林水産省の調査によると、チーズの消費量は2013年度以降、前年を超え続け、いまだ過去最高記録を更新中である。「ホットペッパーグルメ外食総研」の消費者調査(インターネット調査:調査期間2019年1月16日~17日、有効回答数:1030件)でも9割以上が「チーズが好き」と回答しており、チーズは今や日本の国民食といっても過言ではない。なかでも最も「チーズを食べる機会が増えた」と回答したのは20代女性だ。その飲食シーンも「女子会」を中心とした外食のみならず、「家で1人で食べる」「ホームパーティー」という声も多くあがっており、自宅でチーズを食べる機会が増えていることがわかる。そのため小売店にとってもチーズを使用した商品開発は今後さらにチャンスが拡大するのではないかと予想する。

 では、このチーズ人気の背景と現在のトレンドを解説したい。

 チーズは昔からピザやグラタンのトッピングとして親しまれている。食品スーパー(SM)の店頭に数多く並ぶ「とろけるタイプ」のチーズも今や冷蔵庫に欠かせない存在になっていると言える。またワインを中心に酒類とともにチーズを楽しむシーンも日常的に見られるようになり、チーズは日本人にとって親しみの深い食材として定着した。

 チーズの消費量が伸び続けているのには2つの要因があると考える。1つめは、ここ10年でチーズの楽しみ方が増えたことである。海外から輸入された本格的なナチュラルチーズがSMをはじめとした店頭でも販売され、気軽に手に入るようになっている。た食べ方も、ピザやグラタンだけではなく、「チーズカレー鍋」や「チーズ春巻き」など、定番料理のアレンジに活用されるようになった。その進化はとどまるところを知らず、チーズを使ったさまざまな料理が飲食シーンで楽しめるようになっている。

 2つめの要因は、SNSだ。昨今、SNSはブームの醸成に欠かせない存在となっている。チーズがSNSで流行った大きな要因は「動画」である。東京都新宿区のコリアンタウンで一世を風靡したチーズ入りホットドッグ「チーズハットグ」をはじめ、「チーズフォンデュ」「ラクレット」「チーズタッカルビ」などのメニューは、チーズの伸びる様子が“動画映え”することで人気が拡散した。SNSにアップされているトレンドをとらえておくことは、ヒット商品を生み出すためには欠かせないポイントだ。

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見逃せないチーズトレンドと日欧EPAの好影響!

キーワードは「意外性」
楽しみ方がさらに広がる

 では、現在のチーズのトレンドはどうなっているだろうか。

 外食では、トマトクリームソースで味付けされたパンと鶏肉を、とろとろに溶けたチーズにフォンデュして食べる「パネチキン」や、台湾で人気の濃厚なチーズを注いだお茶「チーズティ」など、意外性のあるチーズを使ったメニューに人気が集まっている。また、今年2月には日欧EPA(経済連携協定)が発効され、チーズなど一部のヨーロッパからの輸入品にかかる関税が段階的に引き下げられることが決定した。食に関わる各事業者もチーズを使用した商品展開がしやすくなるため、さらにチーズの楽しみ方の提案が増えると予想される。

 また、輸入チーズが取り扱いやすくなる一方で、国産チーズにも注目したい。日本各地で、生乳やその製造方法にこだわった本格的な国産チーズの生産者は増加傾向にある。

 今後も人気を集めるであろうチーズ料理。余談ではあるが筆者はまだ「チーズが嫌い」という女性に出会ったことがない。

 

有木真理
リクルートライフスタイル『ホットペッパーグルメ外食総研』上席研究員

(株)リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めるとともに、ホットペッパーグルメ外食総研の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成やさらなる外食機会の創出をめざす。自身の年間外食回数は300日以上、ジャンルは立ち飲みから高級店まで多岐にわたる。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがウリで、1日5食くらいは平気で食べることができる。