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焦点:フェイスブック、制裁に直面でも衰えぬ成長期待

4月25日、米フェイスブックは米当局から個人情報保護問題で制裁金を科される可能性に備え、引当金を計上した。しかし投資家はこの問題をさほど懸念していない様子で、株価は急上昇した。写真は上海で昨年11月撮影(2019年 ロイター/Aly Song)

[25日 ロイター] – 米フェイスブックは米当局から個人情報保護問題で制裁金を科される可能性に備え、引当金を計上した。しかし投資家はこの問題をさほど懸念していない様子で、株価は急上昇した。

欧米当局は約1年前から、利用者情報を英政治コンサルタント企業ケンブリッジ・アナリティカと不適切に共有していた問題で同社を取り調べている。この一環として、米連邦取引委員会(FTC)は同社が2011年にFTCと交わした情報保護の合意に違反した可能性を調査中だ。

この問題で、一部企業はフェイスブックから広告を引き揚げ、利用者の間では「#DeleteFacebook(フェイスブックのアカウントを削除しよう)」とつぶやいてアカウントを閉じる動きが広がった。規制コストが膨らむ見通しが示されると、同社の株式時価総額は1カ月足らずで700億ドル近く吹き飛んだ。

ところが時価総額は今、不祥事発覚直後に比べ400億ドル増えている。引当金30億ドルを計上すると発表した翌日の25日には、株価が6%も急伸した。

エジンバラ経営大学院のマーケティング上級講師、ベン・マーダー氏は、「不祥事のたびに識者や政治家が意味不明な要求を突き付け、(フェイスブックは)もう終わりだと宣言する」が、フェイスブックは結局「死にさえしなければ困難は自分を強くするだけ」という諺の見本になったと言う。

フェイスブックがアルゴリズムを変更し、より「意義のあるコンテンツ」を提供するようになった結果、利用者の満足度が上がったことは数字に表れている。

第1・四半期にフェイスブック・アプリのユーザー数は前年同期比8%増加した。

ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はブログで、自社の将来はプライベート・メッセージング事業に掛かっていると説明した。対話アプリ「ワッツアップ」を基盤とした決済システムの導入にも取り組んでいる。

アナリストらは、こうした将来像を歓迎している様子だ。フェイスブックは広告モデルを今後の事業にどう適合させるか具体策を示していないが、広告主は同社の巨大なユーザーベースに依然魅力を感じている、とアナリストは言う。

eマーケターのアナリスト、デブラ・アホ・ウィリアムソン氏は「マーケティング担当者はフェイスブックのフェイクニュース、選挙干渉、個人情報保護その他の問題が気掛かりだと言うかもしれないが、それ以上に重視しているのは自社の財務健全性であり、その意味でフェイスブックは依然として主要な取引相手だ」と話した。

フェイスブックは国際性と事業の多様性も備えている。この数四半期、米国のユーザー数は横ばいに近いが、海外市場は伸びた。

フェイスブック自体のユーザー数が23億8000万人なのに対し、傘下インスタグラムのユーザー数も10億人を超えた。ワッツアップと「フェイスブック・メッセンジャー」の利用者も10億人規模と見られている。

あるアナリストはフェイスブックをスイス・アーミーナイフにたとえ、どのような広告ニーズにも応じられると指摘した。

業界の推計によると、オンラインに移行した広告は世界でまだ25─30%にとどまっている。「約6000億ドル規模の世界の広告産業がオンラインに移行することで、最大の恩恵を受けるのがグーグルと並びフェイスブックだろう」とベアード・エクイティのアナリストチームは予想する。

<和解の影響>

もちろん規制関連のリスクは残っており、今後また悪いニュースが出てユーザーに背を向けられる恐れもある。ターゲティング広告の伸びが鈍りかねないとの懸念もある。

専門家によると、フェイスブックはFTCとの和解で、事業慣行の変更を迫られる可能性がある。例えば、ターゲティング広告に必要な利用者情報の収集を制限されるかもしれない。

2011年に同社がFTCと合意した際にFTCの消費者保護局長だったデービッド・ブラデック氏は、同社は第三者によるいかなるデータ収集についても、利用者の合意を得るよう義務付けられるはずだと言う。

ループ・ベンチャーズのジーニ・マンスター氏は、収集できるデータが減れば売上高が2%押し下げられると推計する。同社の昨年の売上高は558億ドルだった。

(Supantha Mukherjee記者 Diane Bartz記者)