『日本一要求の多い消費者たち』
小澤祥司(ダイヤモンド社/1500円〈本体価格〉)

2019/05/01 00:00
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    日本一要求の多い消費者たち

     生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(生活クラブ)は、「単位生協」と呼ばれる33の会員生協で構成される事業連合生協である。

     生活クラブの単位生協に加入する組合員の総数は約40万人。国内では100万人以上の組合員を抱える生協組織がいくつも存在しており、生活クラブの組合員数がとりわけ多いわけではない。しかし、特筆すべきは、組合員1人当たりの月間利用金額で、2017年度実績で2万3000円と、日本の生協平均の2倍にもなる。

     なぜ、生活クラブは、ほかの生協組織よりも組合員の支持を集めることができるのか。その秘密は生活クラブの商品力にある。減農薬の野菜、国産であるだけでなく飼料にもこだわった精肉、保存料などの添加物は不使用または必要最低限に抑えた日配品・加工食品など、取り扱うアイテムのすべてが原料から飼料に至るまで、由来が明らかなものなのである。

     組合員はしばしば生産者のもとを訪れ、工場や農場を見学し、ときには自主的な点検で生産工程をチェックする。納得できる商品をつくりあげるため、生産者に対して、遠慮なく“もの申す”のである。本書では、生活クラブの商品生産の代表例として “3代さかのぼっても日本生まれ”のオリジナルブランド鶏肉「丹精國鶏」の生産過程を詳細に解説している。

     まさに、「日本一要求の多い消費者(組合員)」を抱える生活クラブだが、一方的に生産者に対して要求し続けるだけではない。生活クラブでは、近年の企業経営の重要テーマとなっている「企業の社会的責任」や、国連が採択する「持続可能な開発目標(SDGs)」にある「持続可能な消費」の概念を1970年代から取り入れ、生産者を支えるための取り組みに力を入れてきた。

     本書を読めば、消費者に寄り添いながら、生産者の持続可能性を維持する、小売業のサステナブル経営の在り方が見えてくる。

    (『ダイヤモンド・チェーンストア』2019年5月1日号掲載)

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