経営統合のシナジーを創出しカスミの質的転換に生かす=カスミ 藤田元宏 社長

聞き手・構成:下田健司
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茨城県を地盤に食品スーパー(SM)を展開するカスミ(藤田元宏社長)。今年3月、マルエツ(東京都/上田真社長)、マックスバリュ関東(東京都/後藤清忠社長)と経営統合し、共同持ち株会社のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/上田真社長:以下、U.S.M.H)を発足させた。経営統合の進捗状況、カスミの成長戦略について藤田社長に聞いた。

他店との同質化を避け違いをいかに出すか

カスミ 代表取締役社長 藤田元宏 カスミ 代表取締役社長
藤田元宏(ふじた・もとひろ)
1955年生まれ。明治大学政治経済学部卒。78年カスミ入社。店舗勤務を経て、2000年取締役。04年常務取締役。05年上席執行役員業務サービス本部マネジャー兼コンプライアンス統括室マネジャー。06年開発本部マネジャー。07年専務取締役。09年店舗開発・サービス本部マネジャー。10年販売統括本部マネジャー兼フードマーケット運営事業本部マネジャー。11年営業統括本部マネジャー兼フードマーケット運営事業本部マネジャー。12年3月代表取締役社長。15年3月U.S.M.H取締役副社長

──カスミの2015年度上期決算は増収増益と好調でした。上期をどのように振り返りますか。

藤田 既存店売上高は対前年同期比2.1%増で、ほぼ計画どおりでした。第1四半期の3?5月は客数が伸び、既存店は好調でしたが、第2四半期は大雨や台風などの悪天候が重なり、苦戦を強いられました。客数は前期並みでしたが、生鮮食品の相場高で客単価が上昇したことが既存店を支えた格好です。ですから、われわれとしては、決して力強い成長とは言えないという見方をしています。

 下期は客数をどのように増やすかが課題です。競合店が多いなかで、同質化しないように、どのように違いを表現していくかが大きなテーマです。商品そのものは競合店と大体共通していますから、それをいかに組み合わせて編集し、売場をつくるか、どのような情報をそこに付加するのかが重要になります。これを一生懸命に磨いていかなければ、お客さまに選ばれる店にはなりません。

 これまでは、標準化された店舗を展開することで、マーケットシェアをしっかり取っていくやり方が定石でしたが、今はそれだけでは十分ではありません。競合店も標準化していますから、同質化してしまいます。ドミナントの中で、互いに異なる特徴を出しながら機能を補完するかたちでシェアを取っていく必要があるのです。そうでなければ、お客さまから支持を得られないでしょう。その店なりのサービスを提供し、地域のお客さまにご愛顧をいただける店になる。ここに力を入れていくことが、持続的な成長を確保していくために非常に重要なことではないかと思っています。

首都圏SMとして独自性をどう出すか

──U.S.M.Hが3月に発足しました。統合作業の進捗状況はいかがですか。

藤田 11のプロジェクトを立ち上げ、定量的な数値目標に向けて、どのようにしてシナジーを出していくかを検討しているところです。商品、物流、ITなどの分野で、どのようにしてコスト効果を引き出せるかがメーンの課題です。3社が得るメリットはそれぞれ異なることも考えられますが、U.S.M.H全体としてはシナジーを生み出せるようになるでしょう。U.S.M.Hは3社で新たなものを創造することで、これまでとまったく異なる事業体になっていく。そのための武器をつくることをめざしています。経営統合のシナジーを創出し、カスミの質的転換に生かしたいと考えています。16年度から、目に見える形にしていきます。

──3社共同での商品調達やプライベートブランド(PB)開発についてはどのように取り組みますか。

藤田 すでに生鮮食品の共同輸入を行っています。各事業会社がこれまで調達したことがないような量を確保でき、コスト効果も得られるというメリットが少しずつ出てきています。こうした取り組みによって、確実に競争力は高まっていくでしょう。

 ただ、これが今後、大きなシナジーにつながるかというと、必ずしもそうはならないと考えています。調達量のボリュームは大きくなりますが、やはり限界はあります。ですから、それよりも、むしろ原材料の調達から製品化するところまでのプロセスの改革を通じて、首都圏のSMとしてのオリジナリティをどのように出すかが重要になるでしょう。これを実現できるような新しい商品を開発していくことが最終目標です。

 PBについては、当社は開発のノウハウを持ち合わせていません。PB開発に本格的に着手していくには、開発態勢を整える必要があります。ある程度インフラの統合ができていることが条件になるでしょう。

──物流の共同化については、どのように考えていますか。

藤田 3社は同じSMではありますが、それぞれフォーマットが異なります。それを、1つの物流インフラに統一していいのかという問題もありますから、物流の整備には少し時間がかかると考えています。

 もちろん、共同物流は今後やっていかざるをえないでしょう。当然ながら、統合できるものは統合したほうが効率性は高まります。ただ、各社の商流が異なるという現実問題があります。ですから、まずその現実問題を解決してからでないと、なかなかインフラのところに手をつけることは難しいのです。併せてプロセスセンターをどうするかということも検討する必要があります。インフラについては、すぐに結論を出そうとは考えていません。

──経営統合の効果が見えてくるのは16年度以降になりますか。

藤田 これまで、自社の中だけで人を育て、自社の中だけの情報で営業してきました。ですから、ほかの2社がどのような考え方で、どんな業務を行っているのか、それにじかに触れることができるメリットは大きいと実感しています。3社間で店長クラスの交流も始まりました。交流を通じていろんな刺激を受け、今までと違った仕事の見方ができるようになります。そうした交流を通して、確固たる利益基盤ができていくということも、統合効果の1つと考えています。

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