サッポロビール 代表取締役社長 髙島 英也
ものづくりを原点に「オンリーワン」の価値を積み重ね 市場に挑み続ける!

聞き手=下田健司 構成=堂森香代
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「サッポロ生ビール黒ラベル」と「ヱビスビール」という、2つのロングセラーブランドを擁するサッポロビール(東京都)。ビール市場が縮小傾向にあるといわれるなかで、「サッポロ生ビール黒ラベル」の販売は、3年連続で前年実績を上回るなど好調に推移している。「オンリーワンを積み重ね、No.1へ」というビジョンのもと、同社はどのような成長戦略を描いているのか、髙島英也社長に聞いた。

若年層の支持を獲得し「黒ラベル」が好調

──メーンブランドである「サッポロ生ビール黒ラベル」が好調です。要因をどのように見ていますか。

たかしまひでや
たかしま・ひでや●1959年11月20日生まれ。福島県出身。82年東北大学農学部卒業、サッポロビール入社。97年大阪工場製造部長。2001年ビール製造本部 製造部担当部長。07年仙台工場長。09年取締役兼執行役員 経営戦略本部長。12年常務執行役員 北海道本部長。15年ポッカサッポロフード&ビバレッジ取締役専務執行役員。17年1月より現職

髙島 第一に、確かな味わいがお客さまに選ばれている理由だと自負しています。私は製造部門に30年在籍していましたが、ビールの原料から自分たちで育種し、品質の向上を一途に追求してきました。何杯飲んでも飽きのこない本当においしいビールをめざし、品質を磨き続けてきたことが、ここに来て実を結んだといえるのではないでしょうか。

 もう1つは、コミュニケーションを通して商品の世界観を確立できたことです。2010年に俳優の妻夫木聡さんを起用したテレビCM「大人エレベーター」シリーズの放送を開始しました。妻夫木さんと幅広い分野で活躍されている方々が、「サッポロ生ビール黒ラベル」を味わいながら“大人”をテーマに語り合うという内容で、このCMを通して“大人の生ビール”という世界観が着実にお客さまに浸透してきたと思います。

──飲食店のカバー率が高く、外食市場でも支持されているブランドです。

髙島 業務用の樽生ビールは従来「サッポロ生ビール」という商品名を使用していましたが、15年に「サッポロ生ビール黒ラベル」へ呼称を統一しました。同時に、外食での飲用経験を家庭での購買につなげるため、ビールジョッキやグラスにも黒丸に金星のロゴマークを入れています。お客さまが手に取ったときに「黒ラベル」の缶ビールを想起していただくことがねらいです。このような地道な活動の結果、現在20代、30代の若年層の方に「黒ラベル」を手にとるお客さまが増えているというのは非常にうれしいことですね。

──もう1つの主力ブランド「ヱビス」はいかがですか。

髙島 ヱビスビールは、1890年に誕生した商品です。ドイツのビール純粋令に則り、副原料を一切使わず、麦芽とホップのみで通常よりも長期熟成させて仕上げています。1900年のパリ万博で金賞を受賞するなど、100年以上も前から海外でもその品質を高く評価されてきました。また、現在の「東京都渋谷区恵比寿」という地名も、ヱビスビールの工場がこの地にあったことに由来しています。このように長い歴史のあるブランドですが、「進化しつつも、本質は変えない」という信念を徹底的に貫き、プライドをもって品質を磨き続けてきました。

 「ヱビス」は商売繁盛の神である恵比寿様をイメージキャラクターに据えた「めでたい、縁起がいい」というブランドイメージから、ハレの日に飲むビールとして親しまれている点も特徴です。年末年始に最も需要が高く、年間売上の2割弱が12月に出荷されています。

 現在は、これに加え、お盆や父の日、記念日、自分にとってのプチご褒美として、より広く手にとっていただけるような機会を増やすことに注力しています。

「ビール復権宣言」を掲げ基幹ブランドを中心に強化

──2017年を振り返ってみて、ビール類の販売動向はいかがでしたか。

髙島 17年は「ビール復権宣言」を掲げ、ビールブランドの強化に取り組んできました。これは16年の事業方針である「ビール強化元年」の姿勢を継承したものです。この取り組みの結果、ビールカテゴリーは16年に引き続き対前年比アップし、ほぼ意図したとおりの成果が得られたといえるでしょう。

 具体的には、「サッポロ生ビール黒ラベル」は、2017年累計で対前年比102.3%、とくに缶ビールが好調で同113.2%と伸長しました。「ヱビス」ブランドは、同98.9%と堅調です。

 3月には、「ヱビス」ブランドで初めての上面酵母を使用したホワイトビール「ヱビス 華みやび」を発売し、通常のヱビスビールユーザーとは異なる層のお客さまを取り込むことに成功しました。今年も市場定着に向けた工夫を継続していきます。

 一方で、新ジャンル「麦とホップ」や発泡酒「極ZERO」が秋口まで伸び悩みました。RTDへの流出や激しい競争下で新たな提案も含め、突き抜けたマーケティングができなかったことが要因です。これをふまえたうえで、当社のビール類全体の販売数量は対前年比98.1%と市場の総需要を上回る結果となりました。

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