パリ協定とは?京都議定書とは何が違う?世界の温室効果ガス削減の取り組みをわかりやすく解説!

読み方:ぱりきょうてい
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パリ協定とは

パリ協定とは、国連気候変動枠組条約締約国会議(以下:COP)が2015年に採択した、温室効果ガス排出削減等の新たな国際的枠組みである。

なおCOPとは、国連気候変動枠組条約(以下:UNFCCC)に加盟する197か国・機関が参加する会議であり、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標としている。第1回の会議となるCOP1は1995年で、2021年11月に開催予定の会議は第26回COP26となる。

COP26開幕
地球温暖化対策を話し合う第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の様子(2021年 ロイター/Yves Herman)

京都議定書からパリ協定へ

パリ協定はUNFCCCの目的を達成するための具体的な枠組みであり、1997年のCOP3で採択された京都議定書を継承するものである。京都議定書は採択されたものの、加盟各国の同意が得られないまま到達すべき具体的な目標の採択には至らなかった。

また京都議定書では、温室効果ガスの排出量削減の努力は先進国のみに求められていたが、パリ協定では途上国を含む全ての参加国に排出削減の努力を求めるなど、大きな変化が見られる。削減の対象枠が大きく広がったのは、1997年以降に途上国が急速な経済発展を見せ、温室効果ガスの排出量が急増したためである。

なお京都議定書の採択当時、もっとも温室効果ガスの排出量が多かった米国は2001年に京都議定書から離脱、またパリ協定締結後にトランプ前政権下でパリ協定から離脱したが、バイデン政権移行後に復帰している。

温室効果ガスとは

地上は太陽から放射されるエネルギーで温められている。大気中に含まれる温室効果ガスは、温められた地上の熱を吸収して大気に再放射し、適正な地上の温度を保つ働きをする。大気中の温室効果ガスの濃度が上がると温室効果が過剰になり、地球温暖化現象を引き起こす。

主な温室効果ガスには、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素などがあるが、IPCC第5次評価報告書によれば二酸化炭素は温室効果ガス中の76%を占めている。IPCCとは、国連気候変動に関する政府間パネルの略称である。

パリ協定締結のメリット

パリ協定が締結されたことで、地球温暖化への取り組みが大きく前進する。そのメリットを享受するのは地球上の生態系と自然体系のすべてであり、未来を含むすべての人々であるといえる。

また締結国にとってのメリットは、協定に加盟することで、自国の状況や事情に適した国際基準策定への参加が可能となる点にある。さらに、国内の環境課題へのコンセンサス確立を後押しすることになる。なお企業にとっては、温室効果ガス削減という世界的なニーズの高まりが、イノベーションの先取りとビジネスチャンスとなる。

パリ協定締結のデメリット

パリ協定を締結する全ての国は温室効果ガスの削減が求められ、削減のための公共投資、企業や生活者に対する支援などが必要となる。また事業者にとっては、自国の環境改善への適応対策の強化という形で経営上の負担増加となる可能性がある。

 パリ協定の概要と各国の取り組みの実例

ここではパリ協定の概要と、パリ協定を締結した主要国の取り組みを紹介する。

パリ協定の概要

パリ協定は2015年に採択され、2016年に発効している。パリ協定は 、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑え、21世紀後半には温室効果ガス排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にするという長期目標を掲げている。パリ協定の大きな特徴は、前述の通り全ての締結国が削減努力を求められる点である。締結国は温室効果ガス削減計画の実施状況、排出量の実績公表の義務があり、5年ごとに実施状況を確認する仕組みとなっている。

2 021年にジョー・バイデン米国大統領が主催する気候サミットにおいて、パリ協定に対応する形で米国は温室効果ガスの新たな削減目標を発表した。わが国やEU、英国、カナダなども、米国に追随する形で新たな目標を掲げている。

パリ協定の取り組み

パリ協定の目標である2050年のカーボンニュートラル達成を掲げているのが日本、米国、EU、英国、カナダである。また2060年に達成すると名乗りをあげているのが中国である。
さらに温室効果ガスの削減目標について、2021年の気候サミットから先進国は新たな目標を掲げている。例えば、日本は2030年度に26%(2013年度比)の削減目標を46%削減に、米国は2025年に26~28%(2005年比)の削減から2030年までに50~52%削減へ、カナダは2030年までに30%(2005年比)の削減目標を40~45%削減に、英国は2030年までに68%(1990年比)の削減目標を2035年には78%削減などとする新目標を表明している。

一方、EUは2030年に55%削減(1990年比)のまま、中国についても2030年にGDP当たりCO2排出量で65%以上削減(2005年比)のままと、2021年5月現在において従来の数値目標の変更は見られない。

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