ボランタリーチェーン(VC)とは?フランチャイズ(FC)との違いやメリット・デメリットを解説!

読み方:ぼらんたりー・ちぇーん(VC)
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近年、ボランタリーチェーンが広がっている。コンビニエンスストアに代表されるフランチャイズチェーンとは異なるチェーンストアである。ボランタリーチェーンはあまり馴染みのない言葉だが、実はボランタリーチェーンで事業を展開している事例はたくさんある。

そこで本記事では、ボランタリーチェーンとフランチャイズチェーンの違い、ボランタリーチェーンのメリットとデメリットを解説し、ボランタリーチェーンの実例についても併せてご紹介する。

ボランタリーチェーン(VC)とは?

ボランタリーチェーンのイメージ
i-stock/metamorworks

 ボランタリーチェーンとは、仕入れの合理化など同じ目的を持つ小売業者が組織を結成して本部を設け、店舗網を広げて事業活動を行っているチェーンストアの形態の一つである。

チェーンストアの種類

 チェーンストアとは、1900年代に米国で生まれた店舗経営方式であり、わが国でも昭和の高度成長期から本格的に導入されてきた。チェーンストアとは、店舗数を拡大していく中で店舗に統一性を持たせ、本部が商品の調達から販促、財務管理などをコントロールし、合理的な運営と経営効率の向上を目的とする仕組みである。なおチェーンストアには、レギュラーチェーン(以下RC)、フランチャイズチェーン(以下FC)、ボランタリーチェーン(以下VC)がある。

ボランタリーチェーン(VC)の特徴

 VCは、独立した小売店が同じ目的を持ち共同で本部を結成、仕入れにおける経済性の向上や販促活動の負担軽減など、経営効率の向上を目的とする組織体である。VCを運営する形態には、小売主宰型と卸(メーカー)主宰型がある。前者は小売店同士がまとまってチェーン本部を設置し運営、後者は卸(またはメーカー)が主導して本部を設置し運営する形となる。なおVCはチェーンストア加盟店としての制約が少なく、一般に店舗経営における自由度が高いことが特徴の一つである。

 わが国初のVCは、大正から昭和にかけて店舗網を広げた資生堂であるといわれている。高度成長期を過ぎた後は、中小の小売店が総合スーパーなどに対抗するためにVCを結成する動きが活発化した時期も見られた。

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■フランチャイズ(FC)との違い

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チェーンストアの代表であるFCとマイナーなVCの違いはなんなのか?さまざまな仕組みや関係性の違いを見ていこう。

本部の仕組みが違う

VCもFCも本部があるのは変わらない。しかしVCとFCでは本部の仕組みが違うのだ。VCの本部は加盟店同士により結成される。つまりどこかの独立した一事業者が本部になり加盟店をまとめるのではなく、加盟店自らが本部を結成し運営していくのが特徴である。

一方、FCは本部事業者が本部を独立して設立し、加盟店と一対一で契約を締結する。本部と加盟店は別であり、運営主体は本部事業者である。このようにVCとFCでは本部の仕組みが違うのだ。

加盟店同士の関係性が違う

VCでは加盟店同士の横のつながりがあるため相互助成が可能だ。加盟店同士は「仲間」という意識が高い。一方、FCは加盟店同士の横のつながりがほぼなく、仲間という意識も低い。

VCは各加盟店からの情報をお互いに共有して活用できるので、地域消費者のニーズを店舗にすぐさま反映させやすい。FCは加盟店同士の横のつながりがないためお互いの情報を知ることはなく店舗運営に反映できない。反映するには本部からの情報提供を手がかりにするしかないのだ。

本部と加盟店の関係性が違う

VCとFCでは本部と加盟店の関係性も違う。FCは本部と加盟店が上下の関係になるのに対して、VCは加盟店が共同出資して本部を結成するので本部も加盟店も同列の立場になるのが大きな違いである。

本部が主体となって運営するのがFCで、加盟店同士が主体となって運営するのがVCということである。VCは本部の主導権が弱く加盟店の協調性や協働性が重視される。FCは本部が加盟店を統括し、トップダウン経営となる。

ボランタリーチェーン(VC)加盟のメリット

新たにチェーン店への加盟を考える際には、VCはさまざまな業種で展開されているので選択が容易である。またVCによっては個人経営の小規模店舗でも参加が可能であり、ロイヤリティ(royalty、使用料)の設定も固定額など、加盟に際しての障壁が低い場合が多い。また一定の枠内で、店舗独自の商品構成や営業時間など、運営に関する制約が少ないのもメリットのひとつとなっている。

VC最大のメリットは商品や機材、備品などの共同仕入れによりコストを削減、さらに本部を介して加盟店の情報を共有、共有情報を活用した効率的な店舗運営が可能となる点である。

ボランタリーチェーン(VC)加盟のデメリット

VCの弱みは、ストアブランドの認知度の低さである。セブン-イレブンに代表されるFCのように、ストアブランド認知度の高い事業者が少ないことである。VCの課題は、いかに知名度を上げて集客力を向上させるかという点である。

自由度が高いVCであるが、チェーンとしての枠組みを超えてしまうとチェーン店舗としての統一感、アピール力が弱まってしまう可能性もある。さらにノウハウの蓄積も、店舗によるバラつきが生じることもある。

つまりFCに比べ、集客力や店舗運営のノウハウ面でデメリットが生じることがある。

ボランタリーチェーン(VC)への加入方法

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一般の小売店がVCへ加盟するための一般的な流れは次のとおりである。

  • 入会の申し込み
  • 本部による入会審査
  • 入会金および会費の支払い

それでは順を追って解説していこう。

ボランタリーチェーン(VC)への入会申し込み

自らの小売店がどこのVCへ加入すれば一番メリットがあるのかをよく確認しよう。加入したは良いもののイメージと異なっていたのでは意味がないからだ。インターネット検索や資料請求など情報収集は怠らないようにしたい。

そして、加入したいVCがきまれば、まずVCへ入会の申し込みをする必要がある。入会には加盟申込書や登記簿謄本などが必要であるが、各VCにより必要な書類が異なるのでよく確認したほうが良いだろう。加入したいVCの本部に直接問い合わせるか、資料請求などで加入方法を必ず確認するようにしよう。

本部での入会審査

VCへ必要な書類を提出したら次は本部による入会審査が行なわれる。加盟希望者から提出された書類をもとに店舗に対して本部独自の調査が行なわれ、その調査結果により加入の可否が決定される。

VCにより加入の条件は異なるが、店舗の規模に関わらず「VCの合理的なシステムを導入して経営を改善したい」、「大手に負けない店舗力を持ちたい」など経営者の熱い想いがあれば認められるケースもある。一方で、「年間売上高10億円以上」などの条件を出すVCもある。

入会金や会費を支払う

無事に審査を通過してVCへの加入が決定したあとに入会金や会費を支払うことになる。VCにより金額は異なるが、入会金は10万円ほど、会費は月額5万円ほどのイメージである。入会金や会費を支払えばその後は、経営ノウハウの研修や店舗の改修などのアドバイスを受けて加盟店としての経営が始まる。

入会希望から実際に加盟できるまでに要する期間はVCにより異なるが、おおよそ2ヵ月ほどのイメージである。VC本部の経営方針と自身の経営方針に相違がないか、実際のVC店舗を見てみることはおすすめしたい。

ボランタリーチェーン(VC)の成功事例

 VCの業界団体に、一般社団法人日本ボランタリーチェーン協会がある。食料品小売業、医薬化粧品小売業などVCを展開している正会員は26法人(協同組合、社団法人、株式会社)となっている。その中から小売主宰型の食品スーパーでVCチェーンを展開するセルコチェーン(東京都)、ドラッグストアでVCチェーンを展開するオールジャパンドラッグ(東京都)を併せて紹介する。

セルコチェーン

セルコチェーンは、全国の中小規模の食品スーパーによって1962年に設立された。組合員は40社439店舗(2020年6月現在)で、組合員総売上額は4,400億円となっている。なお運営本部は日本セルコ、地域運営は関東城西セルコ、北陸セルコ、千葉セルコが担当している。主な本部活動は商材の発掘と開発、オリジナル商品の開発であり、月刊「セルコレポート」を通して経営や店舗運営に必要な情報の共有化を図っている。なおチェーンへの参加資格は、食品スーパーマーケットまたはドラッグストアを経営、売上高が年間10億円以上であることとなっている。

オールジャパンドラッグ

オールジャパンドラッグは1970年に設立され、加盟企業53社560店舗でドラッグストアのVCをスタートさせた。2019年7月現在では加盟企業105社5,351店舗へと拡大し、総売上は1兆8,000 億円となっている。主な本部活動は、加盟店向けの商品の開発・販売であり、1,600品目を超えるプライベートブランド商品を取り揃えている。

CGCジャパン

東京新宿に本部を持つスーパーマーケット三徳の呼びかけにより設立されたCGCジャパンは、1971年に設立され、企業総数206社、総店舗数4,196店、グループ総年商4兆7,466億円の日本最大のVCである。

CGCでは生鮮品から加工食品、日用品と幅広いラインナップをそろえ、約1,600の商品を取り扱っている。CGCでは「ふれ愛交差点」という料理情報誌を毎月発行し、お客様とCGCグループ・加盟店舗とをつないでいる。

まとめ

従来、VCは小売店を中心に展開していたが、近年ではサービス業の参入も増えている。近年の経営は多角化しており、消費者ニーズをとらえることは必須である。消費者ニーズの収集には時間もお金もかかるが、VCに加盟することで得られる相互助成の仕組みは経営には大きなメリットだ。

FCは本部の方針に縛られ、その方針が誤っていれば共倒れとなる。VCは同じ志を持った加盟店からの情報を共有しつつ独自性を保てるので自由度は高い。経営に不安のあるオーナーにとって加盟店同士の助け合いはとても心強いものとなるだろう。

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