ロットとは?ロット管理のメリットや注意点、トレーサビリティについても解説

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ロットのイメージ
ロット(lot)とは、等しい条件のもとで同じ製品が生産される際の最小単位であり、「ひとまとまり」などの意味合いを持っている。

製造業界や物流業界でよく耳にする「ロット」という単位。何気なく聞いているものの、詳しい意味を知らないという方も多いのではないだろうか。同じロットという単位でも、業界によって意味合いが異なる。そのため、ロットという単位を使用する場面に遭遇した際は、正しい意味合いで認識する必要があるだろう。

本記事では、ロットとは何なのか、業界ごとに異なる意味合い、ロット管理について解説する。さらに、ロット管理を実施する際の注意点も解説するので、理解を深めたい場合は参考にしてほしい。

ロットとは

ロット(lot)とは、等しい条件のもとで同じ製品が生産される際の最小単位であり、「ひとまとまり」などの意味合いを持っている。ロットは特定の数量を示すものではなく、製品を提供する側によって設定されるため、1ロットが50個のときもあれば、1,000個のときもあるのが特徴だ。

ロットを使用する代表的な業界は、製造業界や物流業界が挙げられる。ただし、ロットは業界によって意味が異なるものだ。製造業界におけるロットは、同じ条件のもとで製造される製品の製造数量や、出荷数量の最小単位として使用される。一方、物流業界では、輸送物をある程度の量にまとめるといった意味合いや、同一条件によって保管、配送される際の単位として使用される。

製造業界でのロット

生産/工場で作業する技術者のイメージ

ロットの意味をより具体的に伝えるため、ここでは製造業界におけるロットについて、以下の内容を中心に解説しよう。

  • 製造ロット
  • 購入ロット
  • 最小ロット

製造ロット

製造ロットとは、同じ条件のもとで製品を製造する際の最小単位だ。企業によっては大量生産によって在庫過多に陥るケースもあるが、製造ロットを規定しておくことで、需要に見合った製造量に調整できる。

製造ロットは製造者の都合で決められるが、製造コストと需要を勘案し、バランス良く設定しなければならない。また、製造ロットによって製造工程を変更するケースもあることから、良くも悪くも工場の稼働状況に影響する要素といえるだろう。

購入ロット

購入ロットとは、製造した製品を販売する際の最小単位である。製造ロットのように、製造者側が自由に決めることも可能だが、販売先と交渉して決定するケースもあるのが特徴だ。

交渉内容の例として、ロットを大きくして単価を下げるケースや、逆に小さくして単価を上げるケースなどが挙げられる。製造から販売までにはあらゆる流通コストが発生するため、製造側としてはコストを回収できるように調整したいところだ。

ただし、取引先も販売価格の調整が必要になるため、双方が納得できる購入ロットに落ち着くよう、詳細に交渉することが重要だろう。

最小ロット

最小ロットは、製造や出荷などで決められている最低限の数量を意味する。通常、生産や配送など、あらゆる工程で生じるコストを考慮し、損失につながらない範囲で設定されているのが特徴だ。

利益が出ることを考慮すれば最小ロットを大きくするのが効果的だが、大きくし過ぎることで買い手が現れないリスクもある。そのため、多くの利益は期待できないラインで設定する企業もあるのが現実だ。

なお、交渉の場面では、最小ロットを「ミニマム」と表現することがある。例えば「この商品はミニマム50から」「これを仕入れるとすればミニマムはどれくらいか」といった会話が聞こえてくることがあるだろう。

物流業界でのロット

段ボールのバーコードを読み込んでいる様子

物流業界のロットは「輸送ロット」「配送ロット」「保管ロット」の3つに分類される。物流業界におけるロットの特徴は、物を運ぶ際の効率化にフォーカスされていることだ。

輸送ロットと配送ロットは、輸送と配送の効率を高めるために、製品をある程度の数量でまとめることを意味する。

保管ロットとは、効率的かつ適切な在庫管理を行なうためにまとめた数量で保管することだ。在庫を管理する際はバーコードを添付することで管理するが、製品によってはバーコードを添付できないものもある。しかし、保管ロットがあることで、バーコードを添付できない製品でもまとめて管理することが可能になるのだ。

なお、配送ロットと保管ロットに関しては、顧客からロット単位で注文を受けた場合に、同一単位で配送したり保管したりする際にも使用される。

ロット管理とは

ロット管理とは、製造現場や商品管理を行なっている倉庫において、同一製品のまとまり単位であるロットを用いた管理を意味する。これにより、調達から製造、物流、販売といったあらゆる流れを管理することが可能になるのだ。

例えば、消費期限が設定されている商品の管理や、流通過程にトラブルがあった際の原因調査などにおいて、流通過程をスムーズに追跡する「トレーサビリティ」が実現する。ここからは、トレーサビリティについてさらに詳しく解説しよう。

トレーサビリティとは

トレーサビリティはトレース(追跡)とアビリティ(能力)を組み合わせた造語で、「追跡可能性」と訳される。製品が作られる原材料から流通過程、さらには消費段階までを滞りなく追跡できる状態を意味する言葉だ。

トレーサビリティは、2000年代初頭に頻発した異物混入や食品偽造などの社会問題を背景に広まり、整備が進められた。いつ、どこで、どのように、誰が製造し、どのような目的があって、どこへ出庫されたのかなどを管理できるシステムだ。このトレーサビリティをスムーズに導入するには、ロット管理を導入したり、在庫管理システムを活用したりすることで実現可能となる。

なお、トレーサビリティは「チェーントレーサビリティ」と「内部トレーサビリティ」に分類される。

チェーントレーサビリティ

チェーントレーサビリティは、複数のメーカーや人が関わっている製品を製造するにあたり、多岐にわたる工程をまたいでいても製品の移動が確認できる状態のことだ。チェーントレーサビリティによって、製品が出荷されたルートの確認や、販売先を調べることが容易になる。

チェーントレーサビリティによって、トラブル発生時などの素早い対応に有効だ。また、消費者の立場で考えても、製造過程がわかりやすいことで、安心感を持って購入できるというメリットになるだろう。

内部トレーサビリティ

内部トレーサビリティは、1つのメーカー内における同一の製造作業工程や移動の追跡、把握が可能とすることだ。つまり、1つの工場や企業での工程を記録することから、それぞれの拠点ごとに行なわれるトレーサビリティと考えてよいだろう。

部品管理や製造過程など、設定されているトレーサビリティは非常に細かいため、製品の部品や原材料まで追跡可能だ。

内部トレーサビリティは、特定の工程に対する追跡も可能なため、製品の品質を安定的に維持することや、作業効率化に効果的と考えられる。

ロット管理を行なうメリット

ロット管理を行なうことで、どのようなメリットが得られるのだろうか。ここでは、以下の要素に目を向けて具体的に解説する。

  • コスト削減
  • 製品の一元管理
  • 不良品の特定

コスト削減

製品を作るとなれば工場を稼働させ続ける必要があるため、電気代などが膨れ上がる可能性がある。製品によっては1つあたりの単価が安いケースもあり、1つずつ製造するとなれば生産コストが大きくなってしまう。しかし、ロット管理を実施して生産数を調整すれば、利益が出る数量で注文を受けることが可能になる。

また、適切な生産個数を決めなければ、在庫過多になる可能性があるだろう。そもそも在庫過多が生じるということは、製造に要した材料費などにも膨大なコストがかかってしまっていることになる。生産数を調整することで、これまで要していた材料費や製造機械を稼働させ続ける電気代など、あらゆる要素において削減できるのだ。

製品の一元管理が可能に

ロット管理を実施した場合、製品および商品ごとにロット番号を付け、細かく分類することになる。この番号により、特定の製品における出荷場所や流通の把握が可能となり、製造から消費までを一元管理できるのだ。

ロット管理が貢献することの一つに、消費期限の管理が挙げられる。消費期限が迫っている商品は価値を失うため、本来は出荷対象からはずれるはずだ。しかし、何らかのミスが生じ消費者のもとに届いてしまっては、トラブルの種になることは想像に難くない。

ロット管理を行なうことで、先入れ先出し法が可能となり、消費期限あるいは使用期限が設定されている商品を適切に管理できる。余裕を持って消費者に届ければ、消費者の満足度にも良い影響を与えるだろう。

不良品の特定

消費者が商品を手に取ったとしても、不具合が見つかった場合は商品を回収しなければならない。また、発覚した不良品の数が1つだったとしても、その前後に製造したものにも不良品である可能性は高いと考えられるため、それらもすべて回収する必要がある。

ロット管理を行なっていれば、調査範囲や回収範囲を最小限に抑えることが可能なため、原因も特定しやすい。また、クレームにも素早く対応できるため、失う信頼も最小限に抑えられるだろう。

なお、ロット管理を行なっていない場合にリコールが発生すれば、対象範囲の特定が難しいため、全品回収しなければならない可能性がある。回収対応に必要なリソースが多ければ多いほど損失につながるため、適切なロット管理を実施することが大切だ。

ロット管理の注意点

メリットとなる要素が多いロット管理だが、実施する際には注意すべきこともある。以下の注意点について具体的に解説するので、事前に理解を深めてほしい。

  • ロットの基準や管理方法を明確にする
  • 顧客視点を忘れない

ロットの基準や管理方法を明確にする

ロット管理を実施する場合、原料や製造工場、製造年月日など、あらゆるデータを管理することになる。複数のデータを適切に管理するためには、企業全体の認識が統一されていることが重要だ。管理が複雑化しないように、ロット管理における明確な基準を示しておく必要があるだろう。

例えば、ロットごとに保管場所を分ける、保管ケースを使用する際は同一ロットのアイテムを保管するなど、管理方法を決めておくと良い。このように対策しておけば、ロットの取り間違いなども防げるだろう。

顧客視点を忘れない

近年、ECの浸透が進んだことで、小ロットを希望する顧客も増えている。しかし、製造側とすれば、利益や効率性を考慮し、最低ロット数以上でなければ対応しないなど、柔軟に対応できない場面もあるのではないだろうか。

しかし、多様化するニーズや業態に適応しなければ淘汰されてしまう可能性が高まるため、製造側の都合を優先しすぎることなく、また、競合他社と差別化するなど改善が必要となる。例えば、顧客からの小ロットでの希望を実現するために、1つの製品の製造が終わって次の製品の製造に移り、スムーズに生産ができるまでを示す「段取り時間」の短縮を図ることなどが考えられるだろう。

顧客視点を忘れずに、ニーズを反映できるロット管理にも気を配る必要があるだろう。

まとめ

ロットには、ひとまとまりといった意味合いがあり、特定の数量を示すものではないことをご理解いただけただろう。業界によって意味合いに違いはあるが、適切なロット管理の重要性はどの業界にも共通している。ロット管理を実施することで、提供する側は効率性や利益が向上し、消費者は安心と安全を得られるだろう。

また、コスト削減や一元管理など、メリットの多い対策といえるが、注意点にも理解を深めて取り組むことが重要だ。製造、管理する側の視点と顧客視点のバランスを取り、柔軟な対応も必要になるだろう。

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