ID-POSとは?POSとは何が違う?これからのマーケティングに欠かせないID-POSを徹底解説!

読み方:ID - POS
Pocket

ID-POSとは

 ID-POSとは、顧客情報が紐づいた購買データのことである。1978年にアメリカで登場したPOS(Point of Sales:販売時点情報)レジは、日本国内でもスーパーマーケットなどを中心とした組織小売業で急速に広まった。

ID-POSのイメージ図
jattumongkhon/i-stock

 80年代・90年代における組織小売業隆盛の原動力であるPOSレジ普及を支えたのが、商品に表示されたJANコードだ。POSレジは、JAN(Japanese Article Number)とよばれる13桁のコードに記憶された商品情報をバーコードリーダーで読み込む。POSレジにより、大量な購買データの即時収集が可能となり、売れ筋・死に筋商品のリアルタイム把握が実現、店舗陳列の革命につながった。中でも、POSレジの活用によって大成功を収めた代表格がコンビニエンスストア最大手の「セブン-イレブン」だ。

 ただし、POSで収集できるのはあくまで商品情報だけで、5W1H(誰が・いつ・どこで・どのように・何を・なぜ)のうちWHO(誰が)はわからない。つまり、顧客情報はPOSレジではつかめない。これまでは、有償の顧客モニターを使った購買情報収集も行われてきたが、非効率なうえにバイアスもかかりやすい。化粧品や高級アパレルなどでは、個店単位で手書きによる顧客台帳も使われてきたが、見える化といった点では課題が残る。

 ところが最近では、ポイントカードの登場やスマートフォンアプリの普及に伴って、購買データと顧客情報の紐付けが容易になり、情報を即時に、大量に収集することが可能となった。ID-POSの時代がうぶ声を上げたのだ。

ID-POSの実践的フォーラム「AI in ID-POSフォーラム」

 

ID-POSのメリット

 ID-POSのメリットは、CRM(顧客別管理・育成)の促進にある。国内組織小売業も右肩上がりの成長が止まり、従来型のマーケティング(店舗棚割り・新商品販促キャンペーン・アイテムリニューアルなど)だけでは行き詰まりを見せてきた。こうした低成長下で小売業界は、マーケティングのフォーカスが商品から顧客に移ってきた。物量にモノをいわせたマーケティングに頼るのではなく、顧客を軸とした効率的な手法にシフトしなければ、これからの小売業界では生き残れない。

 新規顧客を獲得すると同時に、ロイヤルカスタマーの育成に注力することで、無駄な販促コストを抑えつつ安定した売り上げを確保できるのだ。顧客をターゲットとしたマーケティング、つまりCRM展開には、顧客情報のリアルタイム収集が欠かせない。つまり、ID-POSが顧客マーケティングのカギを握るわけだ。

ID-POSのデメリット

 ID-POSのデメリットは、情報解析の難しさにある。ID-POSで大量の顧客情報をただ集めただけでは、情報解析を本来目的とする顧客基盤の拡大・深化につなげることはできない。ID-POSの生データをいかに「語らせる」か、データをさまざまな切り口から加工し、そこから何がいえるのか、どんな手が打てるのか――有益な「Insight(示唆)」を導かなければ意味がないのだ。

 具体的には、セグメント別購買トレンド分析・顧客行動特性のプロファイリング・販促施策のROI(投資利益率)の分析・顧客別マーケティング施策の事前設計・顧客育成のシナリオ作り(集客から優良顧客の固定化へ)など、CRMでしばしば用いられる手法には一定の知識と経験に基づくコツが欠かせない。

ID-POSの実例

 ID-POSの実例として、マーケティングリサーチ業界の雄・インテージ(東京都)の取り組みについて紹介する。

 ID-POSといったビッグデータの収集がますます容易になる中で、そこからいかにファクト(事実)を引き出すか。全国小売店パネル調査(SRI)などをはじめとして長くマーケティングに携わってきたインテージは、長い年月をかけてデータ解析のスキルを蓄積してきた。

 生データは、バイアスがかかっていたり情報に偏りや欠落があったりと、取り扱いには注意を要する。インテージはバラついた商品マスターの整理、データのクリーニング、市場全体規模の推計など、リサーチに欠かせない地道な手法に磨きをかけてきた。だからこそ、多くの消費材メーカーや小売業界がインテージを頼るのだ。

ID-POSの実践的フォーラム「AI in ID-POSフォーラム」

流通基礎用語集トップへ

関連キーワード:

人気記事ランキング

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態