東京電力福島第1原発にたまった処理水が最初に海洋放出されてから、24日で1カ月。これに反発する中国や香港による日本産水産物の禁輸に伴い、東京・豊洲市場(江東区)の水産業者も深刻な打撃を受けている。輸出が減る一方、福島県産の消費を後押しするムードが高まっている。
処理水の海洋放出が始まった8月24日以降、日本産の水産物を中国は全面禁輸、香港は福島など10都県からの輸入を停止している。豊洲市場では、鮮魚を都内の高級すし店などに卸すだけでなく、海外に輸出する仲卸業者が少なくない。香港向けが多いが、「中国に香港などを経由して渡っていた水産物もあり、損失は大きい」と同市場関係者は話す。
すしネタなどの高級鮮魚を取り扱う同市場の仲卸は「輸出の大半が止まってしまった。被害は数千万円に上りそう」と肩を落とす。ウニなどを手がける別の仲卸は、輸出量が半減。担当者は「禁輸がこのまま長期化すれば、ますます厳しくなる」と不安な表情を浮かべる。
中国などの禁輸措置は、水産物の取引価格にも影響を及ぼしている。北海道産などのホタテは、中国への輸出が滞る前に比べて「相場が2~3割下がった」と同市場の卸会社。香港の禁輸の対象地域となった千葉県産のキンメダイなども価格が3割前後、下落したという。
一方、同市場の卸会社や仲卸からは、福島県産の水産物「常磐もの」を応援する声が相次ぐ。卸会社の競り人は「品質の良い魚が多いので、自信を持って出荷してほしい」と強調。処理水の放出以降、「福島の魚を仕入れるすし店が増えてきている」(大手仲卸)といい、支援の輪が広がっている。