3月期決算企業の定時株主総会が29日、ピークを迎えた。コロナ禍を経て、「物言う株主」と呼ばれるアクティビストらによる株主提案は過去最多を記録し、経営陣を揺さぶった。経営規律の強化や成長戦略を求める提案が可決されるケースが目立っている。
◇「ハゲタカ批判」過去のもの
エレベーター大手フジテックが21日に滋賀県彦根市で開いた総会では、創業家出身の大株主、内山高一前会長側が提案した社外取締役8人の選任議案が否決された。香港投資会社オアシス・マネジメントの推薦で就任していた社外取を含む会社側の取締役9人の選任議案が可決された。
内山氏は昨年、フジテックとの不審な取引を追及されて社長を退き、今年3月には会長を解任された。同氏の弁護士は記者会見で、オアシス側を「短期利益を追求するハゲタカファンド」と批判、株主に理解を求めていたが、議案への賛成は1割強にとどまった。
ある男性株主は総会後「内山氏は統治に問題があった。物言う株主がハゲタカと呼ばれたこともあったが、今は時代が違う」と語った。
◇ファンド提案に賛否
石油元売り大手コスモエネルギーホールディングスの22日の総会では、大株主の旧村上ファンド系投資会社グループが提案した社外取候補が否決された一方、同グループを除く異例の手法で買収防衛策が採決されて承認された。賛成率は59%余りにとどまり、旧村上系陣営を含めれば反対多数となっていた。
陣営側は「無効の決議」と強く反発。経済産業省の研究会の指針案でも「乱用されてはならず、非常に例外的な場合に限られる」と指摘されている手法だけに、議論を呼んでいる。
一方、海洋土木を手掛ける東洋建設では、任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)」が経営陣と委任状争奪戦を展開。27日の総会では、YFO側の取締役候補7人が承認され、取締役の過半を占めた。
YFOの村上皓亮最高投資責任者は「提案では成長戦略に8割の力を注いだ」と説明。経営陣の刷新で従業員らが動揺した可能性もあるとしつつ、有望視される洋上風力など「将来を見据えた成長戦略を、社内昇格の新社長を含めノーサイドで描きたい」と話した。
◇市場内買い増し、けん制
宝飾卸売り大手ナガホリの29日の総会では、筆頭株主の投資会社リ・ジェネレーション(東京)が提出した経営陣交代を求める議案が否決される一方、買収防衛策継続に関する会社提案が可決された。
リ・ジェネは約1年前から市場内を中心にナガホリ株を買い増し、3月末時点の保有比率は11%超。防衛策は持ち分が2割以上となる場合に発動できる内容だ。
市場内買い増しを巡っては、金融審議会(首相の諮問機関)でも、市場外と同様にTOB(株式公開買い付け)による情報開示規制の対象とする方向で検討が進む。リ・ジェネのような買い増し手法には監視の目が厳しくなる可能性もある。
大和総研の調べでは、今年の3月期企業の総会で、株主提案を受けたのは90社と過去最高。吉川英徳主任コンサルタントは「独立性が高く、経営の知見を備えた取締役候補の推薦などは通るケースが出ている。アクティビスト側が(納得感ある)提案を出せるようになってきたのが大きい」と指摘している。