【シリコンバレー時事】米アップルは5日、現実の景色にコンピューターグラフィックス(CG)を投影する拡張現実(AR)に対応したゴーグル型端末「アップルビジョンプロ」を来年発売すると発表した。スマートフォン市場が成熟し、高いシェアを握るアップルへの「寡占」批判も高まる中、「スマホの次」と位置付けるARゴーグルで、アプリ経済圏を一段と広げ、収益を強化する。
「iPhone(アイフォーン)がモバイルコンピューティングを切り開いてきたように、ビジョンプロは(3次元の)空間コンピューティングを切り開く」。クック最高経営責任者(CEO)はこの日、カリフォルニア州の本社で開いた年次開発者会議でこう強調した。アップルウオッチ以来、約9年ぶりの新分野進出となる。
価格は3499ドル(約49万円)。まずは米国で発売し、海外でも順次売り出す。両眼のディスプレーは計2300万画素で、高精細な「4K」映像を見られ、手や目の動き、声で操作できるのが特徴だ。映画やゲームを映し出したり、仕事に使うアプリを複数並べて表示したりできる。
ゴーグル端末を巡っては、インターネット上の仮想空間「メタバース」開発に傾注するSNS最大手の米メタ(旧フェイスブック)や、ソニーグループが先行。アップルは後発組ながら、ビジョンプロの価格をメタの最上位機種「クエストプロ」の約3倍にした。
強気の価格設定の背景には、アップルがスマホアプリで築いた1兆1230億ドル(約156兆円)の経済圏がある。アプリはゴーグルでも使える。5日には、米娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニーの動画配信サービスとの提携も発表した。
調査会社IDCによると、2022年はARや仮想現実(VR)端末で、メタが8割のシェアだった。同社は、アップルが講じたスマホの情報保護強化で広告収入が圧迫される中、次の収益の柱としてメタバースを打ち出しており、因縁の両社がこの領域で激突することになる。