コロナ禍で一時途絶えた外国人の訪日需要が、昨秋の大幅な水際対策の緩和で急速に息を吹き返してきた。円安も追い風に今年はV字回復を果たせるかが焦点となる。カギを握るのは、「ゼロコロナ」政策が響き、いまだ戻りが鈍い中国本土からの訪日客だ。
日本政府観光局によると、昨年11月の訪日外国人数は約93万人で、コロナ禍前の19年同月の4割弱の水準に回復した。昨年10月に外国人の個人旅行やビザなし渡航が再開されるなど入国制限がほぼ撤廃されたことで、「観光の復活に向けた転換点」(和田浩一観光庁長官)となった。
回復をけん引するのは韓国や台湾、香港のほか、米国や東南アジア勢。コロナ禍で抑制されていたペントアップ(繰り越し)需要も見込まれる。
ただ、コロナ前に全体の3割を占めた中国本土からの訪日数は2万1000人と回復率は3%に満たない。中国政府はゼロコロナ政策を緩和し始めたが、感染者が急増。警戒した日本政府が先月末、中国本土からの全入国者を検査する緊急措置を取るなど、不透明感は強い。訪日数は「当面は緩やかな回復にとどまる」(大和総研)との見方は多い。
SMBC日興証券は今年の全訪日数を2250万人程度と予想。過去最多だった19年(3188万人)からは7割程度の戻りを想定する。一方、買い物や飲食など訪日消費の総額は約4兆円と試算。最大だった19年(4兆8000億円)の8割の水準に達する見通しで、一定の景気下支えが期待できそうだ。
日本百貨店協会の全国集計では、昨年11月の免税売上高は約175億4000万円と既に19年同月の7割弱まで回復。円安効果も相まって購買意欲は高まっている。訪日数では低迷する中国本土の購買客も目立っており、SMBC日興の関口直人ジュニアエコノミストは「中国の訪日客が戻ってきた時のインパクトは大きい」と、訪日消費が上振れる可能性も指摘する。