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「グリーンビーンズ」1年で会員数21万人突破 配送エリアさらに拡大へ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       イオン(千葉県/吉田昭夫社長)グループが運営するネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」の会員数が、サービス開始から1年で21万人を超えた。便利な配達時間枠や鮮度を訴求する生鮮品が支持されたほか、物流拠点とする顧客フルフィルメントセンター(CFC)に最先端のテクノロジーを導入するなど、独自の施策も注目を集める。2年目はさらに配送エリアを拡大する。

 

 支持集めた独自のサービス

「グリーンビーンズ」の人気ブランド「鮮度+」。新鮮な野菜が好評だ

 グリーンビーンズは2023710日、東京都5区、千葉県3市で配送を開始した。イオン傘下のイオンネクスト(千葉県/バラット・ルパーニ社長)が運営し、生鮮食品や加工食品、日用品、医薬品など約3万品目以上を展開する。始動から1年で、東京都13区、千葉県8市(一部地域除く)、神奈川県1市まで配送エリアを拡大した。イオンの店舗が少ないエリアでも幅広い年代のお客が利用しており、野澤知広副社長は「イオングループにとって新しい客から支持をいただくことができている。2年目は会員数の倍増をめざす」と手ごたえを語る。

  利用客が順調に増えている要因は何か。野澤氏、太田正道副社長らが5日に開催された戦略説明会で述べたのは、配送・商品の大きく2つの施策だ。まず配送では、午前7時から午後11時まで、配達時間帯を1時間単位で指定できる。また、配送を待つストレスや不在率の軽減につなげる仕組みも導入。アプリをダウンロードすれば、自分の1つ前の客への配達が終わったときと、自宅前に配送車が到着したときに通知を受け取れるようになった。出勤前の午前79時は人気が高いことから、一部地域では試験的に午前6時からの配送も始めている。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

  次に商品では、お客の手元に届いてから一週間の鮮度を保証する「鮮度+(せんどプラス)」を展開する。扱うのは野菜で、ラインアップは小松菜やトマトのほか、有機野菜など10品目以上。従来のネットスーパーは、お客が直接手に取って商品を確認できないため、野菜の鮮度が不安という声が上がることがあった。その不安を逆手に取り、ネットスーパーでも鮮度の高い野菜を届けようと立ち上げたブランドが鮮度+だ。累計販売数は約25万点を超え「非常に大きな人気があり、お客の認知をけん引するブランドとなった」(太田氏)。

イオンネクストの野澤知広代表取締役副社長(中央)と、太田正道副社長(右)、鷲見尚彦商品部長(左)

  ほかにも、全国各地の特産物を期間限定で販売する「ふるさとマルシェ」や、お買い得の大容量シリーズが人気を博している。これらの施策により、継続顧客割合が増え、直近半年の平均のバスケット単価は15%近く伸び、1万円程度になったという。

鮮度訴求で新サービスも

グリーンビーンズの新ブランド「食べごろ+」。果物の食べごろ期間を保証する

 2年目を迎えるにあたり、グリーンビーンズは強みとする鮮度を訴求した商品をさらに強化する。鮮度+は畜産物や冷蔵商品など取り扱い商品を増やし、今夏の発売をめざす。これまでは野菜のみだったが、新たに肉を扱う。鮮度+以外でも、生サーモンのチルドパックやチルドのミールキットなど、鮮度を保ちながら消費期限も長く伸ばせるような研究を進めているところだ。

  7月からは、果物の食べごろ期間を商品に印字して保証する「食べごろ+」を開始した。対象はキウイやアボカド、メロンの3品目。専用の機械や専門スタッフが、果物の特性に合わせて食べごろをチェックする施策で、業界内では初めての試みだという。

 さらに、冷凍商品の鮮度改革も進める。プロトン凍結の技術を取り入れた冷凍の握り寿司や、冷凍した鮭へCAS凍結技術を導入するなど特殊冷凍技術をすでに取り入れた。太田副社長は「ネットスーパーではなくネット専用スーパー。ネット専用だからできる革新だ」と力を込める。

グリーンビーンズが取り扱う冷凍商品の寿司や魚。特殊冷凍技術が使われている

 

配送エリア拡大へ物流拠点強化

 会員数の増加も追い風に、配送エリアの拡大も続ける。グリーンビーンズの運営形態は、CFCを物流拠点とするいわゆるセンター出荷型。配送網は、現在は「誉田CFC」(千葉県)をハブ(中心拠点)としてスポーク(中継拠点)を配置する 「ハブアンドスポーク」方式で構築されている。

  今後は、東京都内の板橋区、豊洲などのエリアや、千葉県の柏・流山エリア、神奈川県の横浜エリアでもサービスの提供を開始する。26年度に「八王子CFC」(東京都)、27年度には「久喜宮代CFC」(埼玉県)を建設予定だ。中でも久喜宮代CFCは最先端技術を導入し、既存のCFCより2倍の供給力を備える。スポークも順次増やしていく。

  CFCへの最先端技術の導入もさらに強化する方針だ。グリーンビーンズが特徴とする鮮度を訴求した商品展開は、協業する英国のネットスーパー最大手「Ocado Group(オカドグループ)」のテクノロジーを活用したコールドチェーンによって成り立っている。常温、冷蔵、冷凍の3つの温度帯で管理することで、収穫からお客に届くまで一定の温度を維持し、温度変化の差による劣化を防いできた。さらに倉庫内でのピッキング作業をロボットで自動化するなど生産性を高める取り組みも行う。

 大型の事業投資が続くグリーンビーンズ。業界内ではネットスーパーの事業黒字化は難しいとされてきたが、野澤副社長は「十分に黒字化できる」と自信をのぞかせる。その理由について、主な配送エリアとする都心部を中心に共働き世代が増えており、平日に買い物に行く時間を確保しづらくなっている傾向があることから「需要は伸びていく」と説明。そのうえで「粗利が低い食料品だけを売っていては収益化は難しい」と語り、非食品の取り扱い拡大や、買い物以外のサービスを充実させていく考えを示した。