新型コロナウイルスのパンデミックのさなか、米アマゾン(Amazon.com)はEC需要増に対応するため人員採用と設備投資を進めた。だが2022年になると状況は一変。コロナ特需が終わり、実店舗を閉鎖したり、大規模な人員削減を実施したりしてきた。しかし最近の同社は、重点分野への投資を推し進めている。先ごろは医療部門の新規事業を拡大したと明らかにした。米メディアによると、食品宅配事業も新展開も計画しているという。
オンライン診療サービス、全米に拡大
アマゾンは23年8月、オンライン診療のマーケットプレース「アマゾン・クリニック(Amazon Clinic)」を全米規模に拡大したと発表した。これは医療機関と患者をつなぐプラットフォームで、患者はアレルギーや結膜炎などの約30の一般的な疾患について、テキストチャットやビデオ通話を通じて診察を受けられる。同サービスは22年11月に始まっていたが、当初は32州のみが対象。それが8月1日から、50州とワシントンD.C.で利用できるようになった。
アマゾンは長年にわたり医療サービスへの参入を試みてきたが、その道のりは決して順風満帆といえるものではなかった。
同社は18年に約8億ドル(当時の為替レートで約900億円)で米国のオンライン薬局企業ピルパック(PillPack)を買収している。ピルパックは患者が医師から受け取った処方せんをネットで受け付け、一包化して全米に宅配していた。アマゾンは20年11月、同事業を基にオンライン薬局「アマゾン・ファーマシー(Amazon Pharmacy)」を立ち上げた。19年9月には医療サービス部門「アマゾン・ケア(Amazon Care)」を設立、20年2月に同名のサービスを開始した。だが、アマゾン・ケアは22年12月31日で終了し、アマゾンの幹部は「顧客のニーズを満たせなかった」と説明した。
一方、アマゾンは22年7月、米国でサブスクリプション(定額課金)型の診療サービスを手がけるワン・メディカル(One Medical)を、総額約39億ドル(当時のレートで約5300億円)で買収すると発表。買収手続きを23年2月に完了させた。ワン・メディカルは、初期診療(プライマリーケア)を対面やオンラインで受けられるサービスを提供している。全米25市場で約190の診療所を運営しており、76万7000人の会員と8500社の法人顧客を持つ。アマゾンは今後も同事業の拡大を図るとみられる
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