「デジタル化と小売業の未来」#11 アマゾンで買物する人が失敗を恐れない理由

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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返品が買物における慎重さをなくす

 なぜ米国ではアマゾンが圧倒的トップシェアを占め、今も急成長を続けているのかというと、「早く届く」というユーザー体験がその要因の1つです。モノを買ってからいかに早く手元に届くかということは買物客にとって非常に重要で、米国ではアマゾンより配達スピードが早いスタートアップも出てきているほどです。また、交換がすぐにできる点もアマゾンの支持が高い要因の1つです。

 これまでの買物に対する慎重さや、買って失敗したらどうしようという不安を持つ人は非常に少なくなっています。とくに若者世代は「買ってだめなら返せばよい」という感覚になっているため、消費のハードルが下がっているのです。このように、配送問題と返品のハードルを両方とも壊したのがアマゾンです。

 ほかにもアマゾンにはレビュー機能があり、若い人はほしい商品があった際に、商品の説明文はあまり読まず、画像と価格を見て、レビューを確認すれば中身を見ずに購入を判断してしまいます。これは、従来の買物の世界観ではあり得ないことですが、ネットではそれが普通になっており、仮に期待したような商品でないことがわかっても、返品すればよいので失敗にすらならないのです。

返品対応が可能な場合、消費者は購買決定が気軽になる
返品対応が可能な場合、消費者は購買決定が気軽になる

 こうしたなか、店舗での接客は不要になり、商品のうんちくなどの説明も求められなくなるのです。このような変化は、以前から進行していましたが、コロナ禍では店舗で買いづらい状況になってしまったため、強制的にさらに進むことになりました。

 今回ご紹介したようなデジタルの利便性は、本当にネット上でのみ提供できるサービスなのでしょうか。もしリアル店舗の利便性がさらに高まれば、消費者の利用は増えるでしょう。日本は国土が狭く、駅前立地などアクセスがよい店舗であれば、モノを受け取るまでの時間を含めたコストがネットより低くなる可能性があります。こうしたことを総合的に考えることで、リアル店舗がオンラインやデジタルプラットフォームを攻略するヒントが見えてくるでしょう。

プロフィール

望月智之(もちづき・ともゆき)

1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1 部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。
ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。
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