「デジタル化と小売業の未来」#2 買物プロセスの変化への対応は必須!消費者にとって買物はますます面倒に

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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買物プロセスの煩わしさを解消したアマゾン・ゴー

  インターネットであれば、色やサイズ、ちょっとした型違いも一発で検索できるのに、アパレルの実店舗では、たとえば欲しいと思っている「半袖・ピンク・Mサイズ」の商品在庫があるかを従業員に質問しなければならないことがストレスなのです。それでも店舗に行くのは試着など実際の使用感を確かめるためであり、お客はデジタル上で購買候補を決定した後に、仕方なく来店するという状況がすでに増加しているのです。

 一方、米国で3年前にスタートした無人コンビニエンスストアの「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」は、従業員がいないコンパクトな店舗であるため、商品を探したり支払いのためにレジに並んだりする必要がなく、購入におけるストレスが低い販売モデルと言えるでしょう。精算もスマホで自動決済されるため、商品を持って店舗を出ればOKという利便性が、買物プロセスの煩わしさを一気に省いているのです。

 このように、オンラインとオフラインにおける買物のフリクション(摩擦)をなくすということが、米国でのデジタル対応の重要性として叫ばれています。日本の数年先を行く米国でも、最も問題視されている点はレジに並ぶことと店員の煩わしさなのです。

実店舗のデジタル化を推進する「ニューリテール」

 201610月にアリババ(Alibaba)創業者のジャック・マーが提唱した「ニューリテール」では、簡単に言えばオフラインにどうオンラインを繋げるかが重要な要素となっています。たとえば、アマゾン・ゴーのようにレジを通さずに買物を完結させるなど、オンラインを前提とした店舗を運営することも、「店舗のデジタル化=ニューリテール」の1つの考え方です。

 ただし、ジャック・マーはECが進んでも店舗の価値はなくならないと語っています。アリババグループが行っている店舗のデジタル化もその流れを象徴していると言えるでしょう。

 消費者の買物プロセスは大きく変化しており、購買の有り様も変わってきているため、企業も小売もその流れに対応していく必要があります。米国・中国はすでにその先へと進んでいるため、これから日本も学ぶべき情報を得て対応していく必要があるでしょう。

 デジタルを活用して消費者の新たなニーズに対応できなければ、競合に大きな差を付けられてしまうことになります。消費者の買物は、買い方・買う物・買い場・買う人の4つの要素で大きく変革しています。今、対応しておかなければ負け組になってしまう可能性が高いため、日本の先を行く米国・中国の動向に注目して、オフラインとオンラインの摩擦に対応していく必要があるでしょう。

プロフィール

望月智之(もちづき・ともゆき)

1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。
自らデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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