コロナ禍が収束する気配がなかなか見えないなか、ECが急成長している。その流れに乗り遅れまいと、足元では多くの小売企業がECシフトを加速させているようだ。しかしこのECの成長は、消費者の根本的な変化から来ているものなのだろうか。ニールセンが実施してきた過去のショッパー調査と2020年5月に実施した「コロナ禍の消費行動」調査をもとに、ショッパー視点から小売業のECシフトについて考察してみたい。
EC利用者増は「強制的」な理由から?
食品小売のECシフトについて考察するため、まずはショッパー意識に注目してみたい。2019年12月時点の調査では、ショッパーの約60%が食品・日用品などのECに関して、利用する意向が低い状況だった(図表❶)。理由としては、①配送料や手数料がもったいない、②買う前に商品が手に取れない、③店頭のほうが特売などのお得な情報が見つかる、④消費期限や鮮度が気になる、などが上位を占めていた(図表❷)。ちなみに、18年の調査でも同様の傾向が見られている。
ここから推察されるのは、足元で起きているECの成長はこれらの不満が解消されたから起こっていることではなく、「コロナ禍で他人との接触を減らしたい」という、強制的な状況の変化によって起こっているということだ。
次に、20年6月上旬に実施したショッパーの意識調査を見てみたい。コロナ以前は、食品・日用品でのECの利用経験がある人は54%だったが、コロナが猛威を奮った6月時点ではそれが
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