コロナ禍で需要が急伸しているネットスーパー。膨張するニーズに対応すべく、英オカド(Ocado)と組んだイオン(千葉県)が、最先端の配送センターを2023年に稼働させることを発表した。同社はここを拠点に「次世代ネットスーパー」を展開したい考えだ。ただ、オカド流の物流インフラについては、巨額な投資規模と稼働までに要する時間の長さなどがやり玉にあがり、議論も呼んでいる。
ついにベールを脱いだ「イオン×オカド」の最先端物流センターの中身
イオンは8月19日、千葉県千葉市にネットスーパー専用の配送センターを設置することを明らかにした。2023年の本格稼働を予定している。
同社は昨年11月に、英ネットスーパー企業のオカド(Ocado)と提携。同社傘下のオカド・ソリューションズ(Ocado Solutions)と独占パートナーシップ契約を結び、オカドが持つネットスーパーの最新技術「オカド・スマート・プラットフォーム(OSP)」の供与を受け、2023年に最新設備を導入した配送センターを設置するという内容だった。そこを拠点に「次世代ネットスーパー」をスタートさせ、30年までにネットスーパー売上高6000億円を達成するという大きな目標も盛り込んだ。
今回発表した千葉の配送センターが、上記の「最新設備を導入した物流拠点」にあたる。一般に「カスタマー・フルフィルメント・センター(CFC)」と呼ばれるもので、建築面積は2万7500㎡におよぶ巨大物流拠点である。
CFC内では生鮮や日用品など約5万品目の在庫を保管・処理する能力を持ち、最新のAIやロボティクスの技術を活用しながら24時間稼働。ロボットは50点の商品を約6分でピッキングから配送準備まで完了させられるという。
巨大ゆえにリスクもはらむCFC
このCFCは、急伸するネットスーパーへのニーズに対して大きなキャパシティを確保できるという利点があるが、一方でその”巨大さ”ゆえに初期投資が膨大で、稼働まで時間を要するというデメリットもある。実際、イオンのCFCも本格稼働は2023年で、およそ3年の歳月をかけることになる。
ちなみに米国では、同様にオカド流のCFCを取り入れる予定のクローガー(Kroger)が、オカドとの提携を発表した直後に株価が急落。投資が巨額で回収期間も長いCFCの導入に関して、投資家やアナリストの見方は必ずしも好意的ではないことが露呈した。
一方で米国で注目されているのが、ウォルマート(Walmart)やアルバートソンズ(Albertsons)などが実験を進めているマイクロ・フルフィルメントセンター(MFC)だ。CFCとの大きな違いは立地とサイズで、店舗併設もしくは店舗近隣に設置され、300坪程度でも稼働する。何よりもイニシャルコストが安く、数カ月で稼働できるため、米国の業界関係者の間ではCFCよりも合理的だとみる向きもある。
もっとも、イオンはCFCに完全に依存するわけではなく、イオングループの食品スーパーや総合スーパーなどの店舗を拠点とした配送も併用する計画だ。CFCと店舗をバランスよく組み合わせながら、これまで赤字で当然とされていた向きもあるネットスーパーを、消費者にとっては利便性が高く、売り手にとっては”稼げるビジネス”に転換できるか注目される。
しかしその答えがでるのは今のところ、少なくとも3年後以降。それより前に国内ネットスーパー市場に大変革をもたらす企業も現れるかもしれない。いずれにしても、コロナ禍を経て、ネットスーパーをめぐる動きから目を離せない。