ついにベールを脱いだイオン×オカドの配送センターの中身 物流インフラの”巨大化”は吉と出るか?

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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巨大ゆえにリスクもはらむCFC

米クローガー、英オカドと提携の自動配送センターをメリーランド州に建設、4ヵ所目
米クローガーもオカド流のネットスーパー構築を進めるが、その成否は議論を呼んでいる

 このCFCは、急伸するネットスーパーへのニーズに対して大きなキャパシティを確保できるという利点があるが、一方でその”巨大さ”ゆえに初期投資が膨大で、稼働まで時間を要するというデメリットもある。実際、イオンのCFCも本格稼働は2023年で、およそ3年の歳月をかけることになる。

 ちなみに米国では、同様にオカド流のCFCを取り入れる予定のクローガー(Kroger)が、オカドとの提携を発表した直後に株価が急落。投資が巨額で回収期間も長いCFCの導入に関して、投資家やアナリストの見方は必ずしも好意的ではないことが露呈した。

 一方で米国で注目されているのが、ウォルマート(Walmart)やアルバートソンズ(Albertsons)などが実験を進めているマイクロ・フルフィルメントセンター(MFC)だ。CFCとの大きな違いは立地とサイズで、店舗併設もしくは店舗近隣に設置され、300坪程度でも稼働する。何よりもイニシャルコストが安く、数カ月で稼働できるため、米国の業界関係者の間ではCFCよりも合理的だとみる向きもある。

 もっとも、イオンはCFCに完全に依存するわけではなく、イオングループの食品スーパーや総合スーパーなどの店舗を拠点とした配送も併用する計画だ。CFCと店舗をバランスよく組み合わせながら、これまで赤字で当然とされていた向きもあるネットスーパーを、消費者にとっては利便性が高く、売り手にとっては”稼げるビジネス”に転換できるか注目される。

 しかしその答えがでるのは今のところ、少なくとも3年後以降。それより前に国内ネットスーパー市場に大変革をもたらす企業も現れるかもしれない。いずれにしても、コロナ禍を経て、ネットスーパーをめぐる動きから目を離せない。

 

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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